引退する西郷泰之の25年「プロに行けなかったからこそ今がある」 (2ページ目)

  • 中里浩章●文 text by Nakasato Hiroaki
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

―― 日本代表に選ばれて、やはり視野が広がった部分もありますか。

「そうですね。それ以前はチーム内でレギュラーになろうとか、そういう小さな殻の中でやっていたんですが、日本代表では世界の野球を見られる。特にキューバとかアメリカなど、スタイルがまったく違う野球を見たことは勉強になりました」

―― そこで衝撃を受けたことは。

「やはり球の速さ。近年ではキューバのアロルディス・チャップマン(現ヤンキース)なんて160キロを超えてきて、本当に速かった。小さい頃ってよく『ボールを見て打ちなさい』って言われるでしょう。でも、彼らのボールをしっかり見て打とうと思っても、投げた瞬間にはもうボールが自分のところまで来ているので、打てないんですよね。だから打撃って結局は勘と言うか(笑)、『だいたいこの辺に来るだろう』っていう感覚で打つものなんだなと思ったし、『ボールを見ろ』という言葉にしても表現の仕方が難しいなと。
 あと、身体能力の違いにも驚きました。たとえば内野守備でいうと、日本の選手は難しい打球が来たとき、無理に正面に入ろうとして届かないケースがある。でも、彼らは難しい打球でもそのまま突っ込んでバックハンドで捕って、そこからどんなに苦しい体勢でも投げてしまうんですよね。そういうプレーも大切だなと思って僕も練習をするようになりましたし、打撃でも彼らのスイングを真似してみたりと、とにかくいろいろなことを試しました」

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