都立小平の120キロ右腕になぜ早実は苦しんだのか? (6ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 3対3のまま進んでいく試合に、不思議な感覚で身を置いていたのは捕手の白石だった。

「ここまでうまくいくとは思っていませんでした。7回から8回くらいまでは楽しかったんですが、9回以降はつらかったですね」

 石田監督も「本当は後攻を取りたかった」と悔やんだが、イニングが進むほど、サヨナラ負けの恐怖がよぎり、精神的な疲労は積み重なっていく。10回は二死満塁のピンチをなんとかしのいだが、11回裏、一死二、三塁の場面で小平の3番手投手・吉田倭斗(1年)が早実の代打・工藤航輔(2年)に一塁線を破られ、試合は終わった。

 試合後、大勢の報道陣に囲まれた清宮は、思わぬ苦戦について淡々とした口調で語った。

「初戦ということで苦しい試合になることは頭に入れていたんですけど、ここまで接戦になるとは。小平さんの気迫に押されてしまったのかなと思います」

 一方、敗れた小平の太田と白石の1年生バッテリーは、ともに「清宮はやっぱりすごい」と口にした。しかし、ただ敗れただけではない。太田は清々しい表情で「自信になりました」と言った。

 もし、再び清宮と対戦することになったら? そう聞くと、捕手の白石は引き締まった表情でこう答えた。

「今日と同じことをしては通用しないと思います。清宮もこれからさらに成長すると思いますけど、僕らも成長します。その成長をぶつけられるように頑張ります」

 石田監督は健闘した選手たちをねぎらいつつ、静かに笑みを浮かべてこう言った。

「まだまだ秋のチームなので。これから学校に帰って練習します!」

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