都立小平の120キロ右腕になぜ早実は苦しんだのか?

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 カウント2−1からアウトコースに投じたストレートが「ビシッ」と白石のミットに収まると、球審は「ストライク!」のコール。変化球を1球挟んで、カウント3−2から投げ込んだ渾身のストレートは外角高めに伸びていき、清宮のスイングは空を切った。最速120 キロの太田が、清宮からストレートで空振り三振を奪ってしまったのだ。

「変化球を交えてなら、ストレートでも抑えられるんだな……」(白石)

 清宮を抑えた後、金子に勝ち越しタイムリー三塁打を浴びた太田だったが、この回以降、見違えて投球が良くなっていった。特に5回裏に左打者の代打・須能浩太郎(1年)から見逃し三振を奪ったインコースのストレート。白石が「この試合でのベストボールでした」と胸を張った1球もあり、太田は初めて三者凡退に抑える。6回に迎えた清宮の第4打席は、セカンドライナーに打ち取った。

 小平は早実に勝ち越しを許した直後、5回表に主将・久守大志(2年)の犠牲フライで同点に追いついていた。イニングごとにフォームを試行錯誤する早実エースの服部は、明らかに本調子からは程遠かった。それでも勝負どころで決定打は許さず、試合は膠着状態に陥(おちい)る。

 小平ベンチの石田監督は、太田の交代機を考えていた。当初から「いけるところまで」と考えていたとはいえ、序盤につかまったこともあり、球数は増えていた。まだ1年生の太田に無理はさせられない。8回裏、二死二塁のピンチをライト・石田良太(2年)の好捕でしのいだところで、エースナンバーをつけた石原稜平(2年)にスイッチする。石原は9回裏に、清宮に対して「あわやサヨナラ」という飛球を浴びるが、三者連続センターフライに抑えて、試合は延長戦にもつれ込んだ。

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