都立小平の120キロ右腕になぜ早実は苦しんだのか? (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 2回裏は早実打線に2安打1四球を許すものの、無失点で切り抜けた小平1年生バッテリー。しかし、小平に吹いていた風向きを変えたのは、やはり「怪物」だった。

 3回裏、無死一塁の場面で清宮の2度目の打席が回ってきた。太田・白石の1年生バッテリーは、清宮に対して徹底的に変化球で攻める。捕手の白石は「ストレートだと持っていかれると思った」と考えていた。だが、いくらカーブやチェンジアップを投げても、清宮のバッティングフォームは崩れない。

「手応えがないな……」と白石が焦りを覚え始めたカウント3−2からの6球目。太田が投げた瞬間に「ちょっと甘く入ったかな」と感じたインコース寄りのカーブを、清宮のバットが一閃する。

「打った瞬間に行ったと思いました。飛距離はなかったけど、いい感じに上がってくれたので」(清宮)

 打球はセンターが見上げる頭上を越えて、右中間の芝生席に落ちた。同点の2ランホームラン。白石は「うまく持っていかれた。やられた!」と唇をかんだ。

 場内は「これが見たかったんだ!」と言わんばかりの興奮状態に。真打(しんうち)の見事な仕事ぶりに空気は一変し、早実が一気に畳み掛ける展開になると思われた。

 それでも、小平守備陣がなんとか反撃をかわして迎えた4回裏、一死二塁のピンチで、早くも清宮の3打席目が回ってきた。

 前の打席で変化球攻めの結果、ホームランを打たれたバッテリーに、残された球種は「ストレート」しかなかった。しかし、「ストレートは通用しないだろう」と考えていた白石に、ひとつの誤算があった。しなやかな腕の振りから放たれる太田のスピンの効いたストレートは、想像以上に清宮に通用したのだ。

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