【高校野球】甲子園まであと一歩。ノーシード日立一高、激闘の夏 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 しかし、グラウンドで戦う選手たちは驚くほど頼もしかった。名門相手に5点差をつけられても意気消沈することなく、徐々に点差を詰め、8回終了時点には6対8と2点差に。そして最終回、相手守備陣のミスもあって1点差に迫ると、なおも二死一、二塁から4番・鈴木彩がショートの頭を越えるヒットを放つ。二塁ランナーがホームに生還できるかは微妙なタイミングだったが、三塁コーチャーの小守はグルグルと腕を回した。この判断が吉と出て、日立一高は同点に追いつくことに成功。小守のことをずっと気にかけていた皆川は、大きくガッツポーズをつくった。

 その後、延長11回に4点を勝ち越した日立一高は、水戸商の反撃をかわして12対9で勝利する。死線をくぐり抜けた安堵からか、皆川の目からは涙がこぼれ落ちた。だが、小池は人一倍興奮しつつも「甲子園に行くまでは泣けん」と堪えた。

 試合後、日立一高ナインは口々に「負ける気がしなかった」と語った。戦う前から皆川や小池によって植えつけられたポジティブなイメージは、実際に「勝利」という結果を得たことで実態の伴った「自信」になった。

 続く3回戦の波崎柳川も序盤に4点のビハインドを許す「ドMな展開」(皆川)となるが、中盤に逆転して8対6で勝利。4回戦はシード校の守谷を3対1で下してベスト8に進出。準々決勝では水城を3対2、準決勝では東洋大牛久に2対0と、いずれも接戦をものにして、日立一高はとうとう30年ぶりに決勝戦に進出してしまう。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る