常に大観衆を集めてしまう「清宮幸太郎の魅力」とは何か? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 玉川が犠打に成功して1死二塁となり、打席に向かう清宮。いつも「のっし、のっし」という足音が聞こえてきそうなほど悠然と歩く清宮だが、心なしか早足に見えた。

 甲子園デビューとなる打席は、カウント1-1から今治西の先発右腕・藤原睦来(ふじわら・よしき)の真ん中高めのストレートを打ってファーストフライ。見逃せばボールになる高めに手を出し、打席外での振る舞いも含めて、平常心ではないことをうかがわせた。

 この日、早稲田実に流れを呼び込んだのは清宮ではなかった。初回の守備を打者3人でリズムよく終わらせた先発右腕・松本皓(まつもと・あきら/3年)。1回裏に先頭打者でセンター前にヒットを放ったリードオフマン・山田淳平(3年)。そして清宮と加藤雅樹(3年)という強打者の後を任される五番打者・金子銀佑(かねこ・ぎんすけ/2年)の活躍ぶりはめざましかった。

 金子は身長168センチ68キロ、軽やかな足運びと柔らかなグラブさばきが光る遊撃手だが、西東京大会ではシュアで勝負強い打撃でも優勝に大きく貢献していた。試合前取材では「自分は長打を打てるバッターではないので、力まず後ろにつなぐことを意識したい」と語りながらも、清宮・加藤が勝負を避けられるケースがあることについて聞かれると「ランナーを出したことを後悔させてやるつもりで打席に入っています」と笑っていた。

 その金子は、清宮が倒れ、加藤が死球で迎えた2死一、二塁の場面で右中間を真っ二つに割る、先制の2点タイムリー三塁打を放つ。その後、エラーでもう1点を追加した早稲田実は、初回の攻防で試合の主導権を握ることに成功した。

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