ドラフトの目玉。仙台大・熊原健人を変えた「プロの言葉」 (3ページ目)

  • 石井祥一●文 text by Ishii Shouichi
  • photo by Kyodo News

 そして熊原が最も衝撃を受けたというのが、エレベーターホールの前でのこのやり取りだった。

「熊原、この狭いスペースで、お前なら何をする?」
「えっ……」
「オレならここでトレーニングをする。要は、野球は環境じゃないということなんだ。どこにいてもやれることはいくらでもある。やらないヤツは理由をつけてやらないだけ。プロになれる選手なんて、ほんの一握り。その一握りの選手は、絶対に言い訳をしないし、必ず努力している。やるかやらないか、その違いだけなんだよ」

 以来、練習に対する意識が変わり、どこで何ができるのか、いろいろと考えるようになったと熊原は言う。

「豊田さんも高校、大学と練習環境には恵まれていなかったらしいのですが、それでもプロに入り、セーブ王のタイトルを獲得した。豊田さんの話を聞いて、やればできるんだと自信が持てましたし、もっと成長しなきゃと強く思いました。そして高校時代からずっと見ていただいていた森本(吉謙)監督に恩返しをする意味でも、仙台大から初のプロ野球選手になりたい」

 オフの期間中は、鹿取コーチ、豊田コーチから指摘された「フォームの固定」に時間を費やした。

「たいぶいい感じで投げられるようになってきました。とにかく、大学選手権でいい結果を残したい」

 熊原が登場するのは6月8日の第1試合(9時開始)、東京ドームで行なわれる九州産業大戦。みちのくの剛腕・熊原の快速球に注目だ。

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