高校ナンバーワン右腕、県岐阜商・高橋純平を待ち構える試練 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 さあ、これからが本番だ。選抜の敗戦は“調整不足”が原因だった。実戦が始まってまだ半月たらずの3月下旬。実戦のマウンドで投げてこそ養える指先の感覚が、この選抜では手につかなかった。非凡な才能は見せつけたが、まだまだこんなもんじゃない。

 だが、これから高橋を待ち受ける現実は、おそらく想像を絶するぐらい厳しいものになるだろう。週末は必ずといっていいほど招待試合が組み込まれ、それもただ試合に投げるだけじゃない。移動があるから、金曜日はほとんど練習ができない。遠くへ行って2~3試合やって帰ってくれば、月曜日は体を休めることも必要になってくるだろう。その結果、実質、週に2~3日しか練習ができなくなる。これがプロ注目のエースがいる人気校の宿命なのだ。すでに九州遠征をはじめ、スケジュールはぎっしり詰まっていると聞く。

 今から2年前、桐光学園の松井裕樹(現・楽天)もこれに苦しんだ。毎週のように続いた招待試合。移動して、投げて帰ってくるだけなら何とかこなせたかもしれないが、勝負の夏に向けて痛かったのが、心身のスタミナを蓄積するための“追い込み練習”ができなかったことだ。

 日々の練習は、どうしても週末の試合に合わせた“調整”の意味合いが強くなり、本番の夏を乗り切るための“強化”にはならなかった。それに遠征に行けば、先方は当然のように投げてくれるものだと思っているから、たとえ短いイニングであっても投げないわけにはいかない。

 また、非公式戦とはいえスカウトやマスコミも大挙押し寄せる。当然、ストレスだって溜まるだろう。体調の維持に気を配って過ごさなければならないし、それにこの夏の敵は“岐阜”だけじゃない。日本中の高校生が「高橋純平」を丸裸にして、対決を挑んでくる。

 はたして、この厳しい現実に高橋はどう立ち向かっていくのだろうか。高橋らしく、この試練さえも楽しみながら乗り越えていってほしいと切に願う。

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