【高校野球】美しき剛腕、県岐阜商・高橋純平を見逃すな! (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 実は、その日に151キロを出したのだと、あとから聞いた。「へぇー」と思ったのは、その日の高橋が全身に力を込めて"奮投"しているように見えなかったからだ。もちろん、手を抜いているわけじゃないし、力を加減しているわけでもない。気負わず、無理せず、見栄を張らず、その日に出せる自分の"MAX"を、その通り出している。そんな印象だった。

「何がなんでも最速を出す!」「絶対に勝つ」

 それが高校野球の醍醐味なのかもしれないが、当時、高校2年になったばかりの高橋には、そういう妙な力みがまるでなかった。勝負のかかった一戦、ここ一番の場面でも、まるで教室で授業を受けているような表情を見せながら、145キロ前後の快速球と、落差の大きいカーブを駆使して、立て続けに三振を奪い、ピンチを切り抜けていく。それこそ、高橋純平が漂わせる"大物感"である。

 それは高校時代の大谷翔平(花巻東→現・日本ハム)でもなく、藤浪晋太郎(大阪桐蔭→現・阪神)でもなく、安樂智大(済美→現・楽天)でもない。大人の目から見た安心感というか、落ち着きを持っていて、加えて、自分の大好きな野球に打ち込んでいる透明感も持ち合わせている。

 ごく普通のファンが、彼のピッチングをテレビで見たら、「あれっ、安樂の方がすごいピッチャーだったんじゃない?」と感じるのではないだろうか。見た目の豪快さ、ダイナミックさ、そして筋骨隆々のユニフォーム姿......。表面的なビジュアルなら安樂だ。しかも、安樂は1球1球、すべてで"MAX"を更新しなくては気が済まないみたいな心意気があって、それが多くのファンの心を震わせた。

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