大本命不在。混戦の「夏の甲子園」を制するのは? (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 史上8校目の春夏連覇を狙う龍谷大平安(京都)は、個々の能力よりもチーム力で勝負する。犬塚貴哉(3年/左投左打)、高橋奎二(2年/左投左打)、元氏玲仁(もとうじ・れいじ/2年/左投左打)の左腕3人の継投で最少失点に抑え、打線は俊足の1番、プロ注目の徳本健太朗(3年/外野手/右投左打)が出塁し、主将で4番の河合泰聖(3年/内野手/左投左打)が還すのがパターンだ。だが、京都大会では打率.250と苦しんだ徳本の出塁率が連覇の大きなカギを握る。平安は開幕試合で、埼玉大会で打率.577をマークした強肩強打の捕手・守屋元気(3年/右投右打)を擁する春日部共栄と対戦する。

 4季連続出場を果たし、センバツ8強の沖縄尚学(沖縄)は、昨年秋に新チームを結成してから沖縄、九州で無敗を誇る。エース・山城大智(3年/右投右打)は沖縄大会で30イニングを投げ、四死球はわずか3。抜群の制球力を武器に粘り強いピッチングを信条としている。打線は沖縄大会で本塁打ゼロと長打力はないが、準決勝の宜野座戦では延長10回に11得点を挙げるなど、一気の集中打が持ち味だ。また、沖縄大会では5試合で6盗塁だったが、得意の足を絡める攻撃ができれば全国制覇の可能性も広がる。

 この5校は選手層が厚く、総合力が高いため優勝候補に挙げられているが、どこも絶対的な力があるわけではない。二番手グループとの差はほとんどなく、番狂わせも十分に考えられる。

 その二番手グループで面白い存在なのが健大高崎(群馬)。2年前に話題となった"機動破壊"は今年も健在。群馬大会6試合で35盗塁を記録した。なかでも3番を打つ脇本直人(3年/外野手/右投左打)は11盗塁をマーク。3回戦では昨年夏の甲子園優勝投手、前橋育英の高橋から逆転打を放つなど、勝負強いバッティングが光る。一発もあり、三拍子揃った好選手だ。投手陣だが、絶対的な力をもった選手はいないが、群馬大会決勝では高橋和輝(3年/左投左打)、松野光次郎(3年/右投右打)、川井智也(2年/左投左打)の3投手による継投でノーヒット・ノーランを達成。もちろん、甲子園でも継投で勝ち抜くつもりだ。

 自身4度目の甲子園出場と経験豊富なエース・岸潤一郎(3年/右投左打ち)を擁する明徳義塾は、今年も伝統の守備を中心とした野球を展開する。チーム打率.324と強力打線ではないが、4試合で27四球を選ぶなど、しぶとく点を取りにいく。

 その明徳義塾と対戦するのが智弁学園(奈良)。高校通算73本塁打の大会ナンバーワンスラッガー・岡本和真(3年/内野手/右投右打)に注目が集まる。投手力は決して高くないだけに、岡本を中心とした打線がどれだけ得点できるかがカギを握るだろう。

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