高卒3年目、日本ハム・上沢直之に大器の予感あり (2ページ目)

  • photo by Nikkan sports

 若いピッチャーは、「変化球は曲げておけばOK」みたいな感覚で投げてしまうのがほとんどなんです。アマチュアではある程度ストレートが良ければ、とりあえずボールを曲げたり、落としたりすれば抑えられるんです。しかし、プロでそれは通用しません。しっかりとコースを狙って投げないと、打ち取ることはできません。

 そういう意味で、上沢はしっかりと意図を持って変化球を投げているように見えます。メジャーでも勝てるピッチャーというのは、ただ投げるのではなく、しっかり考えて投げています。「何を投げるか」ではなく、「何をどこに投げるか」。これが大事なんです。同じようなことを野村克也さんや、レオ・マゾーニ(※)も言っていましたので、これは間違いありません(笑)。
※90年代のアトランタ・ブレーブス黄金期の投手陣を支えた名ピッチングコーチ

 上沢は中学に入ってから野球を始めたそうですが、こういうことは経験が長ければ覚えられることでもないですし、教えてうまくなるものでもありません。それは、その選手が持っているセンスなんです。つまり上沢は、投手としていいセンスを持っているということです。

 あと、彼を見て思うことは、反省すべきことを見つけては、しっかりそこと向き合っているなということです。日本ハムのある選手に聞いたのですが、ブルペンで調子が悪くても、諦めずに試合で何とかしようという姿勢が強いと聞きました。そういうことができる選手はまだまだ伸びるでしょうし、安定感も増してくると思います。

 とにかく、上沢のピッチングはひとつひとつが丁寧です。ただ、上沢のようなボールを投げられるのなら、もっと大胆に投げてもいいのかなと思う時があるのですが、これも性格なんでしょうね(笑)。

 プロの世界で実力を示すことができれば、あとはコンディション作りが大切になってきます。シーズンは約6カ月あり、1週間に一度マウンドに立たなくてはいけない。その中で常に登板日にベストの状態に持っていける調整法を見つけなければなりません。

 ここまでは順調に過ごしていますが、今年だけでなく何年も継続できなければいいピッチャーとは言えません。1週間のルーティンを作ることもひとつの手ですが、それだけではまかないきれません。時期によって体の回復も違ってきますし、自分自身の体調も常に変化している。その中で、「今日はこうしよう」とか、「こういう時はこうだった」など、引き出しをいくつも作っていくことが大事になります。

 僕は、上沢は自分で考えて、調整できる投手だと思っています。だからこそ、この1年を大事にしてほしいと思います。そうすれば、もっとすごいピッチャーになるはずです。

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