この夏の甲子園で噴出した「高校野球の問題」 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 ちなみに、土谷は大会途中で二塁走者の前に立つことを審判に注意されてやめている。

「審判の方に『ランナーの邪魔になるから立つな』と言われました。『サインを盗まれるんで』と言ったんですけど、『それはこっちが見とくから』と」

 だが、ある審判は次のように言う。

「グラウンドに立っていると、なかなかサイン伝達の動作まで見きれないですよ」

 ネット裏からだと明らかにわかる動作も、グラウンドでジャッジをしながらだとわからないというのだ。結果的に、サイン盗みは「やったもん勝ち」の状態になっている。今は、疑わしい行為があった際、審判が注意をするだけで罰則はなく、あくまでマナーの問題になっている。このままではいつまでたっても解決にはいたらない。例えば、控え審判がネット裏からチェックするなど、何らかの対応、対策が求められる。

 決勝の手に汗握る展開に象徴されるように、今大会は接戦が多く、大きな盛り上がりを見せた。だが、一方で浦和学院の小島や常総学院の飯田晴海のようにピッチャーが足をつるなど、熱中症らしき症状が出て降板する場面もあり、暑さ対策、体調管理の難しさをあらためて感じさせられた。今大会から準決勝の前に休養日を1日設けたが、熱中症危険レベルの炎天下で今のままの日程でいいのかという問題も残る。先述した課題も含め、検討すべき事項は山積みだ。節目である第100回の記念大会まであと5年。少しでも問題が改善されていくことを望みたい。

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