出塁率なんと8割! 花巻東・千葉翔太が見せる「極上の技術」 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ファウルを打って観客を沸かせ、四球でガッツポーズをしてベンチに勢いを与える。だが、それ以上に千葉の存在は相手にとって厄介だ。

 彦根東戦ではこんなことがあった。花巻東の3回の攻撃。一死一塁から4番・山下駿人の打球はサードゴロ。セカンドの辻天薫(つじ・たかまさ)が二塁ベースカバーに入り送球を受けたが、併殺を狙わず、スリーアウトと思ってベンチへ引き揚げようとした。アウトカウントを勘違いしていたのが原因だが、その理由を辻はこう語った。

「こんなことは初めて。相手の2番が粘っているうちに、ノーアウトなのか、ワンアウトなのかわからなくなってしまった。見たことのないバッターでした」

 3回の先頭打者として13球粘った千葉の打席の長さが、辻の感覚を狂わせてしまっていた。

 3回戦の済美戦では、上甲正典監督が"千葉対策"として仰天のシフトを見せた。センターの町田卓大が投手と三塁手の中間付近に守る「内野手5人シフト」を敷いたのだ。千葉の印象を聞かれた安樂は「ピッチャーとして嫌ですね。粘られる前に打たせたい」と警戒していたが、千葉は1打席目から積極的に打って出て、4球目をセンター前に弾き返した。また、4打席目も2球目のストレートを強振してライトオーバーの三塁打。そして延長10回の5打席目もセンター前に打ち返して出塁し、勝ち越しのホームを踏んだ。安樂から3安打、2得点の活躍に、済美の上甲正典監督も「思ったより飛ばされた。最後まで千葉くんにやられました」と脱帽するしかなかった。

 続く鳴門戦では2打席目にセンター前ヒットを放ったが、その他はファウル打ちに徹して4四球。全5打席で出塁した。

「(エースの)板東(湧梧)とは『打たれてもいいから真ん中でいこう』と話していたんですけど、真ん中でもカットされました。真っすぐは当てられるので、緩い変化球も使ったんですけど......。2打席目だけはヒット狙いでしたね」と、鳴門の捕手・日下大輝もお手上げ状態だった。千葉を止められない限り、花巻東の流れは止められない。千葉を警戒するあまり、どのチームも自分たちのペースを崩されてしまっている。

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