ワンランク上の投手へ、いま安樂智大が取り組むべきこと (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 もうひとつは体調面。安樂は甲子園に来てから発熱し、抽選会翌日の練習を休んでいる。三重高戦では本人も「腕を振ってもボールがいかなかった。指のかかりがよくなかった」とこぼしたように、明らかに本調子ではなかった。試合後は「体力より精神面の問題」と言っていたが、こんなことも口にした。

「(愛媛大会後に)休養をとって、その後はストレートしか練習していなかった。明日からはスライダーを練習します」

 愛媛大会の連投からの疲労回復という意味だけではなく、体調を崩して調整のリズムが狂ったのも影響しているように感じられた。それでも、2回以降は本来のワインドアップに戻して8回まで無失点。2、3回は先頭打者に安打を許し、4、5回も得点圏に走者を進めたが、得点は許さない。この日の最速はセットから投じた初回の155キロ止まりだったが、ストレート中心に球威で勝負する本来の姿で投球を立て直した。

「点を取ってもらってギアを上げました。ランナー二塁になってから力を入れる。プロのピッチャーもスコアリング(ポジション)に行ってから球速が上がるので、それを参考にしました」

 ところが、9-2と大量リードで迎えた最終回に落とし穴が待っていた。

 試合前から「いいバッター。出してしまうと流れがいってしまう」と警戒していた4番・宇都宮東真にライト前ヒットを許すと、5番の島田拓弥にはレフト前ヒット、6番の小川竜清にはセンター前にポトリと落ちるヒットを打たれた。これにセンターの悪送球が絡んで失点すると、死球、安打、さらには1番の濱村英作に2点二塁打を浴びて4失点。さらに犠牲フライで1点を追加され、一挙5失点のビッグイニングを作られてしまった。この回許した5安打すべてがストレート。7点もリードがあったにもかかわらず、余裕のない単調な投球で冷や汗をかいた。

「スライダー、カーブを投げればよかった。スライダーを投げてデッドボールになるのが怖かった。外中心の配球になってしまった」

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