【高校野球】センバツ総括――6校出場もわずか1勝。関西勢の凋落はなぜ起きた? (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 指導者の熱や気質という部分で、地方で躍進するチームと何か大きな違いはあるのだろうか。PL学園の監督時には前田健太(広島)らを育て、昨年の4月から長野の佐久長聖で指揮を執る藤原弘介監督は、「関西にも熱心な方はたくさんおられました」と前置きした上で、長野に移り住んでから感じたことを口にした。

「ここ(長野)は、冬になると雪が深く、大阪にいた時のように練習ができません。でも、そういう状況だからこそ工夫も生まれますし、いいものを積極的に取り入れていこうという発想にもつながります。あと、北海道の駒大苫小牧が甲子園で勝ったことによって、自分たちもやれるんだと思えるようになったことも大きかったと思います」

 さらに、挙げたのが交通網の発達だ。練習試合などで各地の強豪校と頻繁に試合が組めるようになったことも大きいという。

「長野でも1998年のオリンピックを機に高速道路が整備され、以来、移動がかなりスムーズになったと聞きました。今は、バスで数時間走れば、関東や東海の学校と試合ができます。そういったところで、地域格差といったものが少なくなっているのもあると思います」(藤原監督)

 また、違う視点で近年の流れを語ったのが、甲子園で歴代最多の勝利数を誇る智弁和歌山の高嶋仁監督だ。高嶋監督がキーワードに挙げたのが「寮生活」だった。

「野球部の部長に言われて気付いたんですけど、最近、甲子園で優勝しているほとんどのチームが寮生活をしています。近年だと、寮のない学校で優勝したのは、(2007年夏の)佐賀北ぐらい。寮生活だと、思う存分練習ができるし、食事の管理もしやすい。それに一緒に生活することで、チームとしてまとまりやすい部分があるのかもしれないですね」

 3年間野球に没頭し、仲間との絆も深めることができるという点において、寮生活が大きなメリットになることは考えられる。確かに地方には寮完備の学校が多く、逆に智弁和歌山や履正社、報徳学園らの関西の強豪校は寮を持たない学校が多い。

 もちろん、関西勢の低迷をひとつの理由で語ることはできない。ただ、78年ぶりという事実は、単なる偶然ではなく、いくつもの要素が重なって起きたことだと見るのが自然だろう。長らく高校野球界を支えてきた関西勢が、再び甲子園で強さを取り戻すことができるのか。今後の戦いぶりに注目したい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る