【WBC】侍ジャパン2009「チームを救った名脇役」

  • 柳川悠二●取材・文 text by Yanagawa Yuji
  • photo byTaguchi Yukihito

 また、渡辺と同じく第2先発を任され、幾度となく日本の窮地を救ったのが杉内俊哉だ。特にキューバとの生き残りをかけた3月18日の一戦では、先発の岩隈久志をリリーフして3回をパーフェクトピッチング。さらにアメリカ戦では松坂がつくった二死二塁のピンチを空振り三振で乗り切り、決勝進出の立役者となった。国際経験豊富で、起用法に関係なく安定したピッチングをする杉内がブルペンにいるだけで、先発陣や首脳陣はどれだけ心強かっただろうか。

 このようにブルペンで待機していた投手は、渡辺や杉内のような先発型の投手が多かったが、貴重な中継ぎのプロパーとして、主にワンポイントリリーフで輝きを放ったのが山口鉄也だった。

 山口はアメリカのルーキーリーグを経験し、育成選手からわずか2年で代表選手にまで成長した。3年間過ごしたアメリカ時代はメジャー球に最後までなじむことができず「イップスになりかけていた」と話す。

 WBCに臨むうえで当然ながらボールに対する不安があった。同じ巨人から選出された内海哲也と、キャンプ中から必ずふたりでWBC球を使いキャッチボールを行なっていた。

 憧れのマウンドに立った山口の最大の見せ場は第2ラウンド二度目の韓国戦。日本が同点に追いつかれた7回、一塁にランナーを置いた状況でマウンドに上がった。山口は、韓国人唯一のメジャーリーガーである秋信守(チュ・シンス)を143キロのストレートで併殺に打ち取り、流れを断った。そして日本は次の回に追加点をあげて勝利。わずか2球とはいえ、山口のピッチングが日本に勢いをもたらした。

 その韓国戦で先発した内海と、その後を受けた小松聖は7試合目にして今大会初登板だった。

 首脳陣にとっては、スクランブル事態となった際に、計算できる投手をこの試合で判断しておきたいという思惑もあった。とりわけ小松は9人の打者を無安打(5奪三振)に抑え、得意のカーブが国際大会でも通用することを証明してみせた。

 名脇役がいてこそ、主役が引き立つというもの。両者が固くつながりひとつになることで、日本は勝ち上がっていった。

『Sportiva増刊 WBC2009総集編』(2009年3月28日発売)より転載

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