【高校野球】打倒「私学4強」の思いが、レベルアップを生む (2ページ目)

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 しかし"エース森福"を擁した豊川が県内で台頭してくるのにさして時間はかからなかった。高2の夏の森福は、準決勝まで愛知県大会で56イニングス自責点ゼロという記録に残る快投を演じ、愛知県大会の決勝戦まで勝ち上がった。そして堂上剛裕(現・ドラゴンズ)のいた愛工大名電と激突する。

「2年生の時はどことやっても負けないんじゃないかという感じはありましたからね。決勝までずっとゼロで抑えたのに3点も取られてしまって、すごく責任を感じたのを覚えてます。名電にも負けないという気持ちはもちろんありましたし、負けず嫌いでしたから、あの悔しさは今でも忘れません」

 この年、豊川のブロックには私学4強はいなかった。東邦は中京大中京に敗れ、享栄は愛工大名電が倒した。そして愛工大名電は中京大中京を準決勝で撃破し、決勝に勝ち上がってきた。豊川は私学4強と当たることなく、決勝に勝ち進んでいたのだ。森福は言う。

「私学4強というのは独特の雰囲気を持っています。やることがピシッ、ピシッとしていて、チームワークが乱れない感じがある。試合前のノックも凄かったですね。声もプレイも揃ってますし、ボール回しでもみんな正確にここ(胸)に来る。体もデカいし、そういうことに圧倒されたというのはあったかもしれません。僕ら、ひとりひとりの能力は高かったと思うんですけど、いつもは余裕の顔なのに、みんな緊張しているのが明らかに伝わってくる顔をしてましたからね(苦笑)」

 そのせいか、試合では守りのミスが続出。豊川は愛工大名電に0-3で敗れ、悲願の甲子園初出場は夢と散った。

 そして、森福が3年になった夏。

  豊川はまたも激戦の愛知県大会を勝ち進んだ。しかし、この年も私学4強が同じブロックに集まり、豊川とは決勝まで当たらない組み合わせになっていた。順当に準々決勝まで勝ち残った私学4強のうち、東邦は中京大中京に、享栄は愛工大名電に敗れ、愛工大名電と中京大中京は2年続けて準決勝で激突した。勝ち上がったのは中京大中京。そして、豊川はなんと、2年連続で決勝にコマを進めた。今度は決勝で中京大中京と戦うことになったのである。

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