【高校野球】150キロ右腕に100本塁打男......。今年も近畿は人材の宝庫

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

センバツで優勝を飾った大阪桐蔭の150キロ右腕・藤浪晋太郎センバツで優勝を飾った大阪桐蔭の150キロ右腕・藤浪晋太郎 かつて「野球王国」と呼ばれていた四国、愛知に以前のような元気がない今、日本の高校野球を背負って立つのは「近畿」だろう。もっと正確にいえば、今の高校野球を成り立たせているのは、大阪を中心とした近畿の中学野球。「野球留学」があれだけ大きな問題になったほど、全国各地の高校に多くの人材を輩出し、しかも地元にも多くの逸材が残っている。

 この「泉」のようにこんこんと湧き出る人材の源は何なのか?

 ある日曜日の朝、近鉄電車に乗りぼんやりと車窓を眺めていると、信じられない光景を見た。果てしなく向こうの方まで、河川敷のグラウンドで子どもたちが野球をしているのだ。振り返って反対側の河川敷でも、やはり見渡すかぎり、同じ光景が続いている。「これだ!」と思った。このエネルギーが全国に拡散し、高校野球を支えているのだろう。

 その大阪からは、今年春のセンバツで優勝した大阪桐蔭。レギュラーメンバーはもちろんのこと、控え選手たちも他校ならバリバリのレギュラークラスばかり。ひとりひとり取り上げられないので、ここではエースの藤浪晋太郎(3年/197センチ 86キロ/右投右打)と女房役の森友哉捕手(2年/171センチ 80キロ/右投左打)のバッテリーを紹介したい。

 センバツで毎試合150キロ台をマークするなど、完成度の高さをアピールした藤浪。センバツでの連投の影響もなく、公式戦、招待試合などタフなスケジュールを無難にこなしていると聞く。藤浪は剛球もさることながら、一度浮上して落ちてくるようなスライダーがすごい。昨年の夏を制した日大三の吉永健太朗(現・早稲田大)にも「落ちるシュート」という絶対的な武器があったが、藤浪のスライダーもまったくヒケをとらない「魔球」だ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る