【高校野球】本格派投手がズラリ! 逸材集結の九州が面白い (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 同じ福岡には福岡工大城東の笠原大芽(3年/185センチ 75キロ/左投左打)。しなやか過ぎるほどの腕の振りと、左腕が吹っ飛んでしまうのではないかと思うほどのその腕の振りのスピード。一度、ホップしてから急速落下するカーブは、かつては「ドロップ」と称されていた左腕独特の変化。

 全国的にはまったく無名。それでも、実力的には九州トップクラスの快腕が大分にいる。大分市から阿蘇を経て熊本へ抜ける豊肥本線。その沿線、大分の山の中にある豊後大野市。三重総合高・安藤昇投手(3年/177センチ 74キロ/右投右打)の奮投で、チームも県下有数の実力校へと変貌した。

 好調時には140キロ前半をコンスタントにマークする快速球とスライダー。持ち球の優秀さもさることながら、1点も与えまいとする果敢な投げっぷり。チームを背負って立とうとする心意気がいい。

 その実力は徐々に知れ渡り、九州各地の強豪との実戦経験で、投球の「知恵」もレベルアップ。5月の東福岡との練習試合には、森雄大との投げ合いを見んと、10球団近いプロ野球スカウトが大分の山間の地に集合したという。

 また、野手で注目しているのは、遊撃手が3人。

 走攻守三拍子なら長崎日大の正林大樹(=しょうばやし・だいき/3年/173センチ 73キロ/右投右打)。長崎には昨年も、長崎海星高に永江恭平(西武)がいた。プレイのスピード感、パンチ力、俊足と、正林も全くヒケをとらない。唯一、永江にかなわないものがあるとすれば、「地肩の強さ」か。昨年夏の甲子園で、投手としても140キロ後半をマークした永江の強肩には届かないかもしれないが、高く抜ける投げ損じがほとんどないスローイングの精度で、十分カバーできている。

 フィールディングの巧さで熊本の2人。

 鎮西の諸永秀幸(3年/176センチ70キロ/右投左打)と文徳の藤森要(3年/175センチ 73キロ/右投右打)。

 ともに、打球(ゴロ)のコースに入って来る角度のよさに高い守備センスを感じる。正面の打球にさっと体をずらして、斜めに入って捕りながら投げられる。一連の「動作」は教えてできることじゃない。見事なグラブさばきと身のこなしを、ぜひ球場で見てほしい。

 あと2年生にも、来年の目玉になりそうな逸材が何人かいる。

 長身左腕なのにボディーバランス抜群の投球フォームから140キロ台を投げるのが、宮崎日大の甲斐翼(2年/188センチ 78キロ/左投左打)。昨年、ソフトバンクからドラフト1位指名された大器・武田翔太のあと、凌駕していきそうな逸材がすぐに現れた。

 延岡学園の岩重章仁(2年/180センチ 78キロ/右投右打)と太田晃平(2年/179センチ 78キロ/右投右打)のふたりの内野手は、来季、九州はおろか、全国屈指の右のスラッガーになれる素材。長打が打てて、走れるのが何よりの魅力。

 野球はまだまだ上手じゃない。しかし、パワーがあって、覇気があって、がむしゃらに向かっていける腹の据わった九州男児たちの奮闘を、この夏はいったいどこから見に行こうか。 

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