【高校野球】本格派投手がズラリ! 逸材集結の九州が面白い

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 好きかどうかで言わせてもらえば、九州の高校野球がいちばん面白い。だから毎年、センバツの途中から甲子園を抜け出して、春の県大会が始まっている九州へ足を運んでいる。

 甲子園から九州へ。

 九州の、たとえば熊本・藤崎台球場あたりにやって来て、スタンドに腰を下ろして、県大会の3回戦などを眺めていると、思わず大きなため息が出る。

 前日までのセンバツ。まだ春なのに、「夏」みたいなややこしい連係プレイを見せられて、取材に行けば「結果、結果」。

 高校野球界は今、目を覚ましたばかりの3月下旬だ。ただ、のびのびと、思い切り良くバットを振り、腕を振ればいい。そういう野球が「春の九州」にはあるのだ。

 センバツから九州には3回行った。

 今年もいるぞ、技術はまだまだでも、パワーと大胆さで勝負の九州男児。

 最初に挙げるのは、東福岡の森雄大(3年/184センチ 75キロ/左投左打)と野原総太(3年/181センチ 78キロ/右投右打)の左右の本格派コンビだ。

 春のセンバツも好投手と呼ばれる投手が何人もいたが......いやいや、森はそんなものじゃない。ストレートの勢いが違う。まゆ吊り上げて、打者に向かっていく迫力が違う。柔軟性の中に「芯」のある高校生左腕なんてそうそういないが、今年はこの森雄大がいる。故障さえなければ、今秋のドラフトで「重複」まであってもおかしくないホンモノの逸材である。

 同じ学校にふたりの逸材がいることはそんなに珍しいことじゃないが、野原も他の学校に行っていれば「絶対的エース」級の実力のある好素材だ。コンスタントに140キロ前後をマークする速球の重さ、ねじ込んでくる迫力。金属バットの芯すらも押し返してしまう破壊力を持った剛球は、左腕・森の角度抜群の快速球とともに、ぜひ甲子園で全国のファンに披露してほしいほどの「シロモノ」である。

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