【高校野球】『ビッグ3』対決は藤浪に軍配。大谷の動揺を誘った1本のヒット (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ところが、田端のフライを田中は突っ込みきれず、大澤は追い切れなかった。

「突っ込めばよかったです......。お見合いしてしまった。練習ができていませんでした」(田中)

「ショートのボールでした。(フライが)高かったので、人任せにしてしまったというか......。あれで流れを変えてしまった......」(大澤)

 このポテンヒットでピンチを広げ、犠打とセカンドゴロで1点を返されると、さらに四球と8番・笠松悠哉の二塁打で逆転を許してしまった。笠松に打たれた球は高めに入ったスライダー。完全な失投だった。以前、大谷はこんなことを言っていた。

「ストレートは結構飛ばされるし、一発長打が嫌というのはあります。ただ、それ以上にポテンヒットは心が傷つくんです」

 故障明け初の公式戦マウンドとなった大谷は、試合前のブルペンから逆球や抜け球が目立ち、試合でも5回までの85球のうちボール球は40球と明らかに力んでいた。センバツ前の練習試合でも、1試合で投げたのは最長6イニング。大阪桐蔭の西谷浩一監督が、「大谷くんはケガをしていたので後半にスタミナという面で不安がある。どこかでスキが出る。後半は必ずチャンスがくると選手には言いました」と言う通りの展開になった。

 そして6回に逆転を許して気落ちした大谷は、7回にも田端に2ランを浴び、勝負を決められた。

「スライダーのキレは感じていませんでした。8番(笠松)が打ったので、自分が打たないわけにはいかないだろうと思った。後半、(大谷の)球威は落ちていましたね」(田端)

 大谷は力んでいつも以上にスタミナを消耗していたうえに、心のダメージも負ってしまった。終わってみれば11四死球というまさかの投球内容だった。

「ケガしてからフォームが完全に戻っていませんでした。投げ終わった後に体が一塁側に傾く悪いクセが出た。最初から調子が悪かった。修正できませんでした」(大谷)

 テイクバックから力が入り、インステップする悪循環。試合中に修正できるのが大谷の持ち味だったが、実戦経験の不足がその感覚も鈍らせてしまった。

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