【高校野球】第84回センバツ展望。
逸材揃う東北勢に初優勝の期待

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 この東北勢の初優勝を阻む一番手が愛工大名電(愛知)だ。エース・濱田達郎は左腕から繰り出す最速147キロの速球だけでなく、多彩な変化球で打たせて取る投球もできる。精神的な強さも兼ね備え、大きく崩れる心配はない。守備も強肩捕手の中村雄太朗、好守の遊撃手・佐藤大将、俊足揃いの外野陣と堅く、計算できる失点の範囲内で戦えるのが強みだ。攻撃でも俊足巧打の佐藤を中心に木村斗史稀(きむら・としき)、松原史弥、中村ら50メートル6秒台前半の選手がかき回し、鳥居丈寛(とりい・とものり)、荒木勇斗ら一発のある打者が還す。バリエーションのある攻撃ができるのも心強い。

 また、九州王者の神村学園(鹿児島)も力がある。左腕・平藪樹一郎(ひらやぶ・じゅんいちろう)は球威があり、適度な荒れ球で的が絞りづらい。最速145キロを誇る右腕・柿沢貴裕は魔球シンカーを操り、左打者には絶対の自信を持つ。レギュラー9人中6人が本塁打を記録した打線は、山本常夫監督が「肉食系」と表現する破壊力。冬場の砂浜トレーニングでさらにパワーアップしており、相手にとっては脅威だ。昨夏は初戦で能代商に敗れただけに、大舞台でのリベンジに燃えている。

 さらに、好素材が揃う九州学院(熊本)、大阪桐蔭、智弁学園(奈良)も虎視眈々と優勝を狙う。九州学院は1年から甲子園を経験している萩原英之、溝脇隼人のふたりが打線を引っ張り、左腕エース・大塚尚仁(おおつか・たかひと)が急成長。投打に軸ができたことで、戦い方に幅が出た。

 プロ注目の身長197センチ、150キロ右腕・藤浪晋太郎を擁する大阪桐蔭は打線も強力。公式戦で4本塁打を記録した175センチ、85キロの巨漢・田端良基(たばた・よしき)をはじめ、ベンチ入り18人中12人が本塁打をマーク。また一発だけでなく、出場選手の打率ベスト5に4人が名を連ねるなど確実性もある。不安があるとすれば、10試合で14失策を記録した守備。エース・藤浪は調子に波があるだけに、野手が足を引っ張るようだと苦しくなる。

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