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膨らむ不安。W杯イヤーにわずか2試合という「異常性」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 岡田武史監督率いる日本代表は、W杯イヤーに突入すると、まずベネズエラに引き分けた。続いて行なわれた東アジア選手権では、中国に引き分けて、韓国に完敗。一気に危ういムードを漂わせた。そして、セルビアの“3軍”とも言えるチームに、ホームで、0−3で敗れた途端、それまでヨイショに徹していたメディアも「岡田監督解任すべし」と足並みをそろえて、態度を急変させた。

「辞める」と言ったかと思えば「いや、あれは冗談」と、態度を翻(ひるがえ)す岡田監督の言動も、騒動に拍車を掛けた。ある新聞の行なった「賛成か反対か」という二者択一の簡単な調査によれば、当時の岡田監督の支持率(賛成)は17%、不支持率(反対)は83%にも上った。結局、壮行試合でも韓国に完敗。岡田ジャパンはボロボロの状態で、南アフリカへ向かった。

 だがそれは、B級のエンターテインメントとはいえ、なかなか面白かった。土壇場でチームのエースに抜擢された本田が、本大会でブレイク。日本をベスト16に導く活躍をした。日本のベスト16は、まさに“ドタバタ劇”が生んだ産物だったのだ。

 1月から6月までの半年間、それこそ最高に面白い連続ドラマを見させられているようだった。ヒットドラマの『半沢直樹』や『あまちゃん』、さらには『ごちそうさん』を優に凌(しの)ぐエンタメ性を発揮していたのではないか。どんなに才能のある脚本家にも絶対に書けそうもない展開に、僕のようなすれからしのライターでさえ仰天させられた。

 ニュージーランドとキプロス。遠路はるばる来日する両チームを悪く言うつもりはないけれど、この2チームでは何かが起きそうな気はしない。エンターテインメントのマックス値が予想できる、退屈なドラマを見させられるだけなのではないか。予定調和のまま話は進み、本番前に問題点が噴出することもなく、クライマックを迎えても驚くべき「主役」や「犯人」が登場するとは、とても思えない。

 日本サッカー協会には、外務省がない。優秀な外交官もいない。ここに来てその事実が、白日の下に晒されている恰好だ。さらに言えば、優秀な演出家も、脚本家も不在だった。ザッケローニ監督がこのスケジュールを望んだという噂もあるが、それこそ本末転倒だ。代表監督が代表チームを強化するための試合やトレーニングをしなかったら、“給料泥棒”ではないだろうか。国内組だけでもやれることはある。それこそ、その中に思わぬ「主役」や「犯人」が潜んでいるかもしれない。

 代表チームがドタバタすればするほど、サッカー人気は盛り上がる。僕はそう信じて止まない。W杯も本来、事前にドタバタがあるからこそ、その結果に対して「ああだ、こうだ」言える。しかし、このまま結果が出なければ「準備不足」――たったそれだけの話で終わってしまう。

 なんとか、今から韓国に頭を下げて、1試合だけでもやらせてもらうのは無理な話なのだろうか……。

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