なぜ藤浪晋太郎のボールは荒れるのか?暴れるメカニズムを分析 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 それも、ただプルペンで投げ込むのではない。

「バッターを相手に投げるのが好きな"投げたがり"です(笑)」(西谷監督)

 高校時代はピッチングの感覚がしっくりこないと、大会中であっても、試合前日にシートバッティングで投げることがあった。とにかく、打者に投げることで感覚を掴んでいくタイプだった。

 逆に言えば、そこまでしないと感覚が定着しなかった。そう考えたとき、あらためて藤浪のサイズに目がいく。

 身長197センチで、両手を広げたときの腕の長さは208センチ(高校当時)。手のひらのサイズはボール4つを悠々持てる20.2センチ。すべてが規格外の長さである。

 西谷監督は藤浪の身長を体感するため、ブロックを積み、約2メートルの高さに立ったところ、「これはバント処理するのも大変」と実感したという。何気ない動きも、普通の人とはまったく違う感覚なのだ。長身、長い腕、大きな手を武器にするため、藤浪はひたすら投げることでその感覚を養っていった。

 入団後も、プロの調整法に従いながら、キャンプからしっかり投げ込み、体をつくり、感覚を整えシーズンを迎えてきた。

 しかし、今年はその作業を行なう時間が決定的に少なかった。WBCからプロ野球開幕までの約3週間あまり、試合で投げたのはたった1試合。ただでさえ調整が厳しいなか、"投げたがり"の藤浪がどれほど苦労してきたかは想像に難くない。

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