【新車のツボ110】VWパサート試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 走りも、これ見よがしなスポーツ性はなくて、ある意味で控えめ......というか上品系だが、とにかく優等生。高速では路面から浮いて滑るごとくフラットに安定しているし、いわゆる"ダウンサイジングターボ"の1.4リッターは従来の2.5リッター級の性能をもつ。ダウンサイジングターボは各社ともまだ試行錯誤の時代なのか、同じような性能でも厳密な排気量はさまざまで、他社には1.6〜1.8リッターの例もある。排気量0.5リッターきざみで自動車税が決まる日本では、パサートは"1.5リッター未満"に分類されて、日本の税制でもドンピシャのお得感なのがまたニクい。

 さらに、レーダークルーズコントロールや車線キープシステムを組み合わせた"半自動運転"や話題のオートブレーキも、VWはこのパサートで勝負をかけてきた感じで、現時点ではお世辞ぬきで世界トップレベルのひとつ。しかも、パサートのエンジンルームは弟分のゴルフと共通のコンパクト設計。室内は身長180cm級の大男4人がダラーッとアシを投げ出して座れるくらいに広いし、今回のヴァリアント(=ステーションワゴン)のトランクもベンツビーエムの同クラスより明らかにドドーンと広い。

 このように、パサートは文句のつけようがない正論のカタマリである。この連載では少しばかり欠点があっても、それ以上に愛すべき一点突破のツボをもつクルマを取り上げることが多いのだが、パサートは良くも悪くも、そういう一芸グルマとは真逆の存在である。いやホント、特筆すべき一芸のツボを指摘できないのは、パサートの全身がツボだらけ......だからだ。そりゃあ、世界中で売れるわけだ。

【スペック】
VWパサート・ヴァリアントTSIハイライン
全長×全幅×全高:4775×1830×1510mm
ホイールベース:2790mm
車両重量:1510kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1394cc
最高出力:150ps/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
変速機:7AT
JC08モード燃費:20.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:433万9900円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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