【新車のツボ88】トヨタ・プロボックス/サクシード試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 プロボックスとサクシード(この2台は、販売店が異なるだけの同じクルマだ)は、日本全国津々浦々で走り回るライトバンだ。小口配する小売店の方々から、そして何軒もの得意先を1日中回る営業マン......のためのお仕事グルマである。

 プロボックス/サクシード(以下プロサク)の発売は2002年。主要部分を初代ヴィッツをベースにしたプロサクは、トヨタ初のライトバン専用車として登場した。それから12年後に新しくなったプロサクを、トヨタは公式には"マイナーチェンジ"と呼ぶ。安全性のために高くなったボンネット以外、目に見える基本スタイルが従来と変わらないからだ。

 開発担当氏によると、それは「ボディサイズや荷室容量は大好評で、(12年経っても)変える必然性がまったくなかった」からで、実際にはエンジンルームからダッシュボード骨格、そして前席周辺の土台までが新しい。そもそも、従来型が初代ヴィッツと共用していた部分がそこであり、今回はそれを最新のヴィッツ(3代目)に"総とっかえ"したカタチとなる。プロサクのようなFF車ではこのボディ前半分の骨格構造こそがクルマの核心なわけで、プロ目線では「これって事実上のフルチェンジじゃん!」なのである。

 まあ、これがマイナーかフルか......はともかく、新しいプロサクは、"質実剛健"や"機能優先"、あるいは"プロフェッショナルツール"といった言葉に平静を保てない一部マニアには、これまで以上にツボを突く。

 数百kgレベルの荷物を想定したライトバンはリアサスペンションがガチガチに固く、空車に近い状態で乗ると、乗り心地はドシンバタンなのが普通である。しかし、新しいプロサクは空車でも乗り心地は驚くほどしなやかで、ハンドリングも正確になった。仕事がら平日の高速道路を走ることが多いワタシだが、平日の追い越し車線を本気で、しかも長時間ブッと飛ばしているクルマの大半は、この種のライトバンなのだ。新しいプロサクはそうしたヘビーな使い方をしても、明らかに疲れにくく、跳ねずに安定している。

 もちろん、スペック上の"最大積載量"は以前と同等だが、新しいプロサクの「いちばんバランスが取れる荷重」が、従来より軽いレベルに想定されているのは間違いない。

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