【新車のツボ70】トヨタSAI試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 SAI(サイ)は事実上の日本専用車である。そして、ハイブリッドであることを差し引いても、ボディの大きさのわりに価格は高めだ。トヨタの商品戦略でいえば、SAIは昔あったプログレの後継機種という。つまり、"ニッポンのオジサンオバサンのためだけにつくられた小さな高級車"といったところか。

 いま売られている最新のSAIは、昨年秋に内外装を大幅に刷新したビッグマイナーチェンジモデルだ。ボディ前後には、まるで夜の東京スカイツリーのように淡く光るLEDが仕込まれており、今っぽくキラキラでハイテク風。インテリアはあたかも東京ゲートブリッジのごとく、宙に浮いた中央インパネが最大のハイライトである。

 まあ、内外装の基本的な骨格デザインは、4年半前にデビューしたもともとのSAIと変わりはない。しかし、最初のSAIの細部デザインはとてもスッキリと簡素なものだった。ハイブリッドや情報装備など中身は最新で高級だったが、デザイン的には"ウッドとレザーとメッキ"という伝統的な高級車観を真正面から否定。

 スイッチもことごとく隠しトビラの裏に隠されていた。走りの味つけもしかり。静かでフワフワの快適性より、ドライで軽快な小気味よさを前面に押し出していた。それは「これからの"高級"とはエコでクリーンでシンプル」というちょっとハズシをねらった思想によるものだった。SAIは日本専用の高級車なのに、あえて、昭和的......というかニッポン伝統の高級車テイストの、ことごとく逆をはったのだった。

 SAIが最初に出たときはまだハイブリッドもめずらしく、当時のエコカー減税&補助金にハマったこともあって、けっこう人気を博した。しかし、トヨタ以外のメーカーも同等以上のエコカーを出すようになると、SAIの販売は失速してしまった。というわけで、この新しいSAIは、開発陣が「本当ならフルモデルチェンジなみの手間ヒマ」と語るくらいの徹底した改良を受けて、起死回生をねらう。

 新しいSAIの外観は前記のようにメッキの面積が大幅拡大して、内装では大面積ウッド調パネルにスイッチやダイヤルがズラッとならぶ。しかも、メインダイヤルはアナログチックなアルミ切削品、ナビ用のパームトップはレザー貼り......と、早いハナシが、新しいSAIは4年半前に自分が打ち出した新しかった(はずの)高級感を、今度はことごとくひっくり返している(笑)。

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