【新車のツボ30】
フィアット・プントエヴォ 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 日本でフィアットというと、この『新車のツボ』(第10回)でも取り上げた500が人気。小さくて可愛らしい、レトロデザインのキャラクター商品である。日本では500専業ブランドみたいになっているフィアットだが、じつはもう1台、ひっそり(!?)と売られるフィアットがある。プントエヴォという。

 日本で誤解されがちだが、フィアットのクルマづくりはもともと生真面目。フィアットはイタリア自動車産業をほぼ牛耳る巨大グループで、スポーツ路線はアルファロメオ、高級車はランチア、超高級車はマセラティ、そしてスーパーカーはフェラーリ......と、グループ内できちんと棲み分けている。フィアットはあくまで大衆のための実用車ブランドで、500のようなイメージ商品は異端なのだ。

 だから、プントエヴォも実体はとても真面目につくられたコンパクトカーだ。スポーツカー風のスタイルに似合わず、室内はきちんと広く、視界性能も悪くない。全幅が1.7m未満(日本では5ナンバー)なのも良心的。乗り味もパリッと小気味いいが、高速になるほどしっとり......なのもいかにも欧州車である。

 もっとも、真面目なだけの欧州コンパクトなら、VWポロという圧倒的人気の大横綱がいる。それでも、ワタシがあえてプントエヴォを推すのには、真面目さよりもっと大きなツボがある。それはパワートレーンだ。

 日本で売られるプントエヴォのパワートレーンは、1.4Lエンジンに2ペダル自動変速機が組み合わせられる。エンジン性能は笑っちゃうほど、どうってことない。変速機にしても"デュアロジック"という仰々しい商品名がつくものの、昔ながらのMTをベースにクラッチと変速を自動化しただけ。ATやCVTがどんどん進化して、さらにツインクラッチというハイテクが登場した現在では、この方式はフィアット以外にほとんど例がない。

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