見応え十分の「0-0」。ポーランドにあってドイツにないものとは?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Hara Etsuo

「持つ者」と「持たざる者」。

 ユーロ2016グループリーグ第2戦で対戦した、ドイツとポーランドの特徴を言葉で言い表すなら、そんな表現になるのではないだろうか。

「持たざる者」とは、2年前のワールドカップブラジル大会を制したドイツのことだ。

 世界王者、ドイツの最大の武器となっているのはボールポゼッション。中盤だけでなくDFラインも含め、ビルドアップ能力は極めて高い。ピッチ上の選手が流動的にポジションを変えながらパスをつなぎ、攻撃を組み立て、チャンスを作ることができる。

 W杯では高温多湿の環境を考慮し、リトリートする守備からカウンターを狙う現実的な戦略を採ったが、本来はスペインに勝るとも劣らないポゼッションこそが持ち味である。GK(マヌエル・ノイアー)、センターバック(ジェローム・ボアテング、マッツ・フンメルス)も含め、ピッチ上の11人全員でこれほど穴のないポゼッションができるチームは、世界でも類を見ない。

 だが、それほどの力を持つドイツにも、唯一欠けているピースがある。センターフォワードだ。

 ドイツはすでに代表を引退したベテランFW、ミロスラフ・クローゼに長らく頼ってきたことからも分かるように、「生粋のセンターフォワード」とでも言うべきFWに人材を欠く。幸か不幸か、結果的にMFマリオ・ゲッツェを"偽の9番"としてセンターフォワードに起用する策に至り、さらにポゼッションサッカーを際立たせることになったわけだが、言い換えれば、苦肉の策でもある。

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