CL連敗のアーセナル。なぜ2億ポンドの資金を使えないのか?

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke  photo by Getty Images

 2シーズン前のFA杯で戴冠を果たし、2004-05シーズンから続いた無冠時代に終止符を打ったものの、国内リーグでは11年にわたって頂点に手が届かないアーセナル。2003-04シーズンに無敗優勝を遂げたインパクトが大きかった分、近年は高揚感よりも停滞感の印象のほうが強い。

チャンピオンズリーグで連敗し、苦い表情のアーセン・ベンゲルチャンピオンズリーグで連敗し、苦い表情のアーセン・ベンゲル しかし、今オフはようやく暗いトンネルから抜け出しそうな気配があった。理由のひとつ目は、長年ウィークポイントとされてきたGKに、チェルシーからペトル・チェフを獲得したこと。念願だった欧州トップクラスの守護神を迎え、もろさが散見されるディフェンスに改善の見通しが立った。そしてもうひとつは、クラブのディレクターを務めるロード・ハリスの発言だ。72歳の同氏はこう語る。

「エミレーツ・スタジアムの建設費があり、以前は補強費が限られていたが、今は違う。クラブの口座には2億ポンド(約363億円)の資金があり、今夏の補強費として1億ポンドを指揮官に渡してもいい」

 2億ポンドの資金からローンの負債などを差し引いても、今夏の補強費は少なくとも7000万~8000万ポンド(約127億円~145億円)と見積もられていた。チェフを皮切りにワールドクラスを獲得し、昨シーズンを上回るスカッドが完成する雰囲気はたしかにあった。かくしてアーセナルは「優勝候補の一角」として、開幕前は近年になかった期待の眼差しが向けられていた。

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