アヤックスを救えなかった「現代サッカーの創始者」 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 その一方で、クライフの息がかかった組織にはありがちだが、アヤックスでは内紛が始まった。クライフは、オーフェルマルスが下部組織の若手をあまりトップチームに昇格させず、外から選手を買うことが多すぎると考えていた。

 アヤックスには選手を買う資金力はある。アヤックスはヨーロッパで最も財政基盤の堅いクラブで、8700万ユーロ(約117億円)近くを銀行に持っているが、この際そんなことは関係ない。下部組織から昇格してきた選手たちが世界のトップクラスに見えなくても、それも関係ない。とにかくクライフは、外から選手を連れてくるのが嫌いなのだ。

 そこでクライフは、かつてのチームメイトであるチュウ・ラ・リンを、スペシャルアドバイザーとしてアヤックスに送り込んだ。気むずかしいクライフは現役時代にはリンと口論が絶えなかったが、今ではそれなりに大切な存在と考えているようだ。だがオーフェルマルスは、リンのことを快く思っていない。ヨンクは他のクラブ幹部の何人かとは口もきかなくなっている。アヤックスは行く先もわからないまま難破しかけている船のようだ。

 しかし、クライフの影響力はすべての大陸に広がっている。娘婿のトッド・ビーンとともに、彼は「クライフ流」の改革プログラムを世界中のクラブに売る企業を運営している。顧客には、メキシコのグアダラハラや南アフリカのマメロディ・サンダウンズ、イスラエルのマッカビ・テルアビブ、オーストラリアのメルボルン・シティなどがある。

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