飲酒事故不問に挑発、コパ初優勝へ何でもありのチリ

  • 三村高之●文 text&photo by Mimura Takayuki

 今回が第44回大会となるコパ・アメリカ。開催国のチリは、1916年に4ヵ国が参加して行なわれた第1回大会のメンバーでありながら、これまで優勝経験がない。

 過去には戦火を交え、今でも何かとライバル関係にある隣国のペルーは2回、ボリビアは1回南米王者に輝いている。このためライバル国の人々からしばしば、「SIN COPA」(優勝なし)と揶揄(やゆ)されてきた。自国開催、しかも戦力の充実した今回は、汚名を返上する絶好の機会。悲願の初優勝に向け、代表と国民の思いはひとつになっている。

 グループAに入ったチリは、エクアドルに2-0、メキシコに3-3、ボリビアに5-0と、2勝1引き分けで決勝トーナメントに進出した。レギュラーメンバーでないメキシコに3失点を喫したのは問題だが、3試合で10得点という破壊力を見せつけた。

カバーニ(ウルグアイ)を退場に追い込み国民的英雄となったハラ(右)カバーニ(ウルグアイ)を退場に追い込み国民的英雄となったハラ(右) しかし第2戦のメキシコ戦後、代表に激震が走る。リフレッシュデーとして外出が認められた日に、夫人とカジノへ行ったFWビダル(ユベントス)がアルコールを飲み、帰り道で交通事故を起こして飲酒運転で逮捕されてしまったのだ。

 彼は以前にも、代表の宿舎を抜け出して夜遊びをしたことで処分された前科がある。サンパオリ監督は非常に厳格な人物。普通なら、代表からの追放など厳しい処分を科すケースだ。しかしビダルはここまでの2試合で3得点の大活躍。国民はビダル擁護の声を上げ、代表メンバーもこれに同調。そして本人が涙の謝罪会見を行ない、少なくとも大会中は何の処分もされないことになった。

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