内田篤人の現在。シャルケと日本代表の間に生じた悲しき溝

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 その後、シャルケは内田をベンチに置きながらも起用しなかった。チームはシステムを3-5-2から4-2-3-1に戻した頃で、本来であれば内田を起用したいところだった。指揮官との話し合いも行なわれたようだが、試合に出場できるところまでは回復しなかった。

 そんな矢先、日本代表に招集された内田は3月27日、31日と、2戦続けて出場している。だがその後シャルケに戻ってからは、2試合ベンチ入りしたものの、4月19日のボルフスブルク戦からはベンチすら外れている。練習でも主力組から外れた。この頃には今季は試合と本格的な練習に復帰できないことが分かっていた。

 ボルフスブルク戦の前の週に、ヘルトSD(スポーツディレクター)とディマッティオが立て続けに内田について言及している。それらの発言は公式サイトなどで確認できるが、要は「W杯前は、我々が手術したほうが良いというのに、日本代表の意向で保存療法を選択した。W杯の直後は、日本代表が『手術をさせたい』と言ってきた。そして3月の代表戦では試合に出場してきた。これはいいことではない。そして再び日本代表側は『手術を』と言ってきている。だが、我々は手術回避の方向だ」というものだった。

 シャルケ(ヘルト)は我慢して試合に起用しないでいるのに、日本代表の、それも親善試合で2試合も起用したことに怒り心頭だと、その文面からは読みとることができる。それもクラブとしては当然のことだろう。あらためて手術を提案されても、W杯前後のいきさつを考えれば受け入れられるものではない。今やシャルケにとって内田は純粋に戦力として欠かせない選手。計算が立たないようでは困るのだ。 

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