これぞ最先端のサッカー。ペップ・バイエルンを見逃すな

  • 木崎伸也●取材・文 text by Kizaki Shinya
  • photo by Getty Images

 見たこともないような、異次元のサッカーだった。

 11月5日、チャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第4節、バイエルン対ローマ。前節、同じくバイエルにホームで1対7と敗れたローマは、同じ過ちは犯すまいと、フィールドプレイヤー全員がゴール前に集結するという"超守備的戦術"を採用してきた。いくらバイエルンといえど、攻めあぐねるように思われた。

 だが、ペップ・グアルディオラ体制2年目となる今季、バイエルンはすでに新たな武器を手にしていた。

バイエルンの監督に就任し、2季目を迎えたペップ・グアルディオラバイエルンの監督に就任し、2季目を迎えたペップ・グアルディオラ それは究極の「オフザボールの連動」――。

 ひとりが裏に抜け出そうとして急ストップしたかと思えば、別の角度から他の選手が急加速してくる。その選手にパスが出ないと、また誰かがフリーラニングを仕掛ける。FWのロベルト・レバンドフスキ、右MFのマリオ・ゲッツェ、中盤のフィリップ・ラームとダビド・アラバ、左サイドバックのファン・ベルナト......。とにかく走り込みが止まらないのだ。

 さらにパスを出した選手も、かなりの確率でそのままゴールに向かって走るため、ワンツーがおもしろいように決まる。DFたちは高次の"連立方程式"を解かねばならず、ラインを上げるべきか下げるべきか、もはや簡単な答えは存在しない。バイエルンの先制点は、まさにこういう複雑な連動から生まれたものだった。

 前半38分、相手GKのクリアをセンターバックのジェローム・ボアテングが拾うと、フランク・リベリーの足下へズバッと強烈な縦パスを通した。それが号砲となって前線のレバンドフスキとゲッツェが一気に前に走り始める。だが、リベリーは裏をかいて左のアラバへ。アラバはペナルティエリアの中からマイナスのパスを折り返し、突入してきたリベリーが悠々とゴールマウスに流し込んだ。複数の選手が同時にアクションを起こしたがゆえに生まれた、素晴らしいオフザボールの連動だった。

「相手の6バックを崩すのは楽ではなかったけれど、先制点を決めることが重要だった」

 4−3−3の中盤に入ったラームがそう振り返ったように、この先制点で勝負あり。守備的なローマに反撃する力はなく、あとはバイエルンの"攻撃練習"に。後半にゲッツェが追加点を奪い、2対0で完勝した。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る