アルゼンチン決勝進出。明暗分けたマスチェラーノの1プレイ (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 この試合の明暗を分けたのは、延長戦突入寸前、マスチェラーノのスライディングタックルだ。ゴール正面、やや左にドリブルで侵入したロッベンが、シュートを放った瞬間だった。彼は自らの右足を渾身の力で伸ばし、シュートをブロックすることに成功した。まさに根性。アルゼンチン魂といってもいい、見事なスライディングタックルだった。

 この試合のMVPには、PK戦でオランダのシュートを2本止めたロメロが選ばれたが、僕的にはマスチェラーノが90分に見せたタックルこそが、この試合で一番光るプレイに見えた。

 それがなければ、試合は1−0でオランダだった。

 PK合戦に敗れたオランダで光ったのは、中盤のワィナルダム。その的確なボール操作と状況判断は、この試合のレベルをひとつ高いレベルに押し上げたと言っていい。

 ファン・ハールは、今ごろ何を思っているだろうか。守備的にいってPK負け。だったら、攻撃的にいってPK負けした方が遙かに後味はよい。オランダ人好みの結末になる。

 98年W杯でベスト4に進出したオランダがそうだった。準決勝でブラジルと1対1の好試合を演じ、PK戦負けしたヒディンクのオランダの方が、同じベスト4でも、優れたものに見える。ファン・ハールはヒディンクを超えられなかった。そう言っていいだろう。

 ドイツ対アルゼンチン。13日にリオのマラカナンで行なわれる決勝は、4年前の7月3日、ケープタウンで行なわれた準々決勝と同じカードになった。4-0。そこでドイツは完勝した。2トップ下で、将軍然とプレイするメッシを完全に封じ込み、その負の要素、すなわち、メッシのディフェンス能力の低さを露わにする方法で大勝した。アルゼンチンのやり方は、その時と何ら変わらない。メッシが抱える負の要素は、さらに表に出やすくなっている。

 少なくとも僕はドイツ優位と見る。極論を言えば、こんなメッシを擁するアルゼンチンには優勝して欲しくないのである。

  

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