オランダを4強に導いたのは「日本的」監督采配

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「策士」ルイス・ファンハールの本領発揮といったところだろうか。

 サルバドールで行なわれたワールドカップ準々決勝、オランダ-コスタリカは延長戦を含めた120分間を戦い終えても0-0のまま。残すはいよいよ延長後半アディショナルタイムのみ、となったところで、オランダ代表のルイス・ファンハール監督は3人目の交代選手としてGKクルルを送り出した。

 要するに、PK戦に備えてGKを代えたのである。

 我々日本人にとっては、実は案外なじみのある交代策である。というのも、高校サッカー選手権で見かける光景だからだ。

 だが、舞台は世界一を決める4年に一度のワールドカップ。それどころか、ユーロやコパ・アメリカなどの大陸王者を決める大会にまで枠を広げても、このレベルの勝負でPK戦に備えてGKを代えるなどという話は聞いたことがない。

 コスタリカ代表のホルヘ・ルイス・ピント監督が試合後、「(コスタリカの)ナバスは今大会全体を通して最高のGKだったと思うが、PK戦は運次第」と語ったように、PK戦は実力だけでは予想ができない。GKを代えることが、どれほど勝利の確率を高めるのかを推し量るのは難しい。

 まして延長戦まで戦い抜くとなれば、疲労の見える選手もおり、貴重な3つの交代枠のうちひとつをGKのために残しておくことも難しい。それが仇(あだ)となって、PK戦に入る前に敗れてしまっては元も子もないからだ。

 ファンハール監督も「あえてPK戦のために交代枠を残しておいたわけではない」という。

 当然、多くのチャンスを作りながら得点できない状況に選手交代はありえた。また、実際にファンペルシーらの名前を挙げ、負傷している選手や消耗している選手がいたことを認め、「誰を入れるのがいいかを考えた」と心のうちを明かした。

 しかし、それでも結果的に動かなかった。

 PK戦に突入する直前にGKを代える異例の采配を「トリッキーで際どい判断だった」と振り返り、ファンハール監督はこう語った。

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