日本のアニメで育った得点王候補、ハメス・ロドリゲス (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

「バルデラマはコロンビアの10番だったから、もちろん子供の頃の憧れだったよ。でも実は、Atomに夢中になっていた。こんなプレイが実際にできたらすごく楽しいだろうな、ってね」

 ハメス自身が、そんな告白をしている。

 想像力。その点で、ハメスは限界を作らなかったのだろう。

『キャプテン翼』で登場人物たちが繰り出す「必殺技」の多くは、あくまで漫画の世界の出来事で、実現は難しい。しかし「こんなことをできたら誰もがぞくぞくする」というイメージを、ハメスは無邪気に膨らませていた。だからこそウルグアイ戦で見せたように、ゴールに背を向けながらトラップで反転し、ボールの落ち際を左足ボレーで叩き、バーすれすれに強烈なシュートを放つという芸当もやってのけるのだ。

 ハメスは3歳の頃、プロサッカー選手だった父が家を出て行ってしまい、母親に育てられている。可愛がってくれた叔父もサッカー選手だったことで、幼い頃はまさに「ボールはともだち」だったそうだ。片時もボールを側から離さず、他のおもちゃにはなんの興味も示さなかったという。そして背番号は常に翼と同じ10番だった。

 その経歴は漫画のシナリオでも描きにくい。14歳にしてプロのゲームに出場し、16歳でアルゼンチンに渡り、バンフィールドと契約。19歳になると、ポルトガルの名門FCポルトに移籍。そこでポルトガルリーグ、ポルトガルカップ、ヨーロッパリーグとタイトルを取り尽くした。そして21歳のときには4500万ユーロ(約60億円)という移籍金でASモナコと契約している。

「ハメスの技術は非常に高い。でも、それだけではないんだ。観る者が惹きつけられる美しさがある」

 これはポルトで欧州王者に輝いている先輩、デコの表現だ。

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