ブラジルに敗れるも、日本のヒントになったチリの激闘

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSU FOTOGRAFIA

小宮良之のブラジル蹴球紀行(11)

 決勝トーナメント1回戦、ブラジル対チリは延長120分を戦い、1-1のままPK戦に突入。開催国が劇的な形で勝利を収めた。試合のヒーローは、PKストップで勝利を引き寄せたGKジュリオ・セザールだった。彼は4年前の南アフリカW杯、オランダ戦で戦犯とされており、今大会も直前に所属先がMLSのクラブに決まるなど、状態が疑問視されていただけあって、喜びもひとしおだったろう。

 しかし、この試合で目立ったのはチリの善戦だった。

ネイマール(右)にくらいつくシルバ(チリ)の守備ネイマール(右)にくらいつくシルバ(チリ)の守備 前線の選手が猛烈にプレスをかけ、ブラジルのビルドアップを許さない。その上で、中盤の選手は常にパスコースを切る形でフォロー。さらに、バックラインが高い位置を保ちながら、GKクラウディオ・ブラーボが広い守備範囲を見せた。コンパクトなラインをキープし、前線、中盤、バックラインの中にブラジル人選手を包囲。三つのラインはアコーディオンのように連動し、相手を自由にさせなかった。

 その上で、チリはいくつかの決定機を作り、劣勢に立っていない。得点の可能性を感じさせた。

 特筆すべきは、チリのディフェンダー陣が身長170cm台の選手ばかりだったことだろう。3バックの中心であるガリー・メデルは172cm。高さの欠如はハンディだったはずだが、前からアグレッシブに守備をすることで欠点を補い、セットプレイ以外では少しも遜色なかった。

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