クラブの試合とココが違う。これがW杯のサッカーだ

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】ワールドカップのサッカーとは?(前編)

 ワールドカップのフットボールは、ある意味で特殊なものだ。まもなくブラジルで行なわれるゲームが、クラブのフットボールと違う点を、5つあげてみる。

合宿中のブラジル代表ネイマール(右)とスコラーリ監督 photo by Getty Images合宿中のブラジル代表ネイマール(右)とスコラーリ監督 photo by Getty Images1 ワールドカップはクラブの試合より守備的

 過去2回のワールドカップで1試合に生まれたゴールは、平均で2.3点にとどまっている。この数字はヨーロッパの4大リーグの平均に比べて、0.5点ほど少ない。実際、たいていのワールドカップでは、ゴールの数より死者の数のほうが多いだろう。しかもワールドカップの参加国には、他国よりかなり格下で、ボコボコにされることがわかっているチーム(たとえばサウジアラビアとかトーゴとか)がどうしても入ってくるのに、これだけゴールが少ない。

 ワールドカップのゲームは単にとても守備的なのだ。格下のチームは自陣のゴール前に固まり、屈辱的な敗戦だけは避けようとする。ワールドカップのテレビ観戦は1次リーグが無事に終わってからにするというのは、けっこう賢い楽しみ方だ。

 クラブのフットボールでは、別のインセンティブが働く。1990年代前半からテレビ放映される試合が増えたため、たいていのビッグクラブは攻撃的な試合で視聴者を楽しませようとする。ジョゼ・モウリーニョはトップレベルのクラブで最も守備的な戦術をとる監督といわれるが、2012~13シーズンに彼が率いたレアル・マドリードは、1試合当たり平均3ゴール近くをあげていた。

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