マンUプレミア制覇。香川真司は栄冠をどう受け止めたか

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

チームメイトのエブラ(左)、ギグスと優勝を喜ぶ香川真司チームメイトのエブラ(左)、ギグスと優勝を喜ぶ香川真司 アストンビラ戦の試合終了のホイッスルが鳴り、マンチェスター・ユナイテッドの2年ぶり20回目の優勝が決まった。ピッチ上でその記念すべき瞬間を迎えた香川真司は、胸元で小さく拍手をし、その場を歩きながら呼吸を整えた。ガッツポーズも雄叫びもなし。静かにささやかに、何かを感じていた。

 その後は仲間と共にゆっくりと場内を2周、サポーターと歓喜を分かち合った。ロッカールームに戻るとちょっとしたシャンパンファイトが行なわれた。その様子はMUTV(マンUのオフィシャルTV)に映し出され、仲間とともにはしゃぐ香川の姿が見えた。

 その後、取材に応じた時はまた様子が違った。優勝の感想を問われると「まあ、そうですね......」と、間を空け、言葉を選びながら語り出した。すでに冷静になっていた。

「素晴らしい雰囲気の中で試合をやれましたし、優勝を勝ち取れたことは素晴らしい。この喜びはいつ浴びても素晴らしいなと思います。(この1年は)もっともっと結果を求めていたし、ケガもしましたし、そう簡単にうまくいかないのかなと感じたり、いろんな葛藤だったり、悔しさだったり、悩みだったりがたくさんありました。そういう意味では深い1年になりました」

 喜んではいるが、歯切れがいいとは言えない。それほど、自身の出来映えにはついては消化不良どころか悔しさと不満が残るシーズンだった。           

 ドルトムント時代の2度の優勝は、心からの喜びが伝わってくるものだった。ドルトムントでの1年目は、大活躍の前半戦から一転、後半戦は故障で丸ごと棒に振った。それでもホームでの最終節には途中出場、貢献の証としてクロップ監督が見せ場を作った。試合後にはほろ酔いになり「オレ、最高!」と笑顔を見せた。

 昨季は香川のゴールで優勝が決定した。得点後、駆け寄ったクロップに抱きかかえられた香川の姿は非常に印象深いものだった。すでにチームを離れることが決まっていたこともあるのだろう。「もう最高。試合中に泣きそうになったくらい!」と話したミックスゾーンはあちこちからビールが飛んでくるような状態で、もちろん香川自身も上機嫌だった。

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