【イングランド】リバプールの逆襲が始まるこれだけの理由

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by GettyImages

長年リバプールを支えてきた生え抜きのDF、ジェイミー・キャラガー長年リバプールを支えてきた生え抜きのDF、ジェイミー・キャラガー【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】今季のプレミアを占う(後編)

 リバプールにとって、第一の希望の光がここにある。今シーズンのリバプールは、さすがにもう少し賢い戦術を使うだろう。新監督のブレンダン・ロジャーズは細かいパスをつなぐのを好み、昨シーズンまで率いたスウォンジーではほとんどクロスを使っていなかった。

 ロジャーズがパスゲームのできるチームをつくりたければ、FWのアンディ・キャロルを起用しないという選択も必要になる。キャロルはヘディングが強い(ユーロ2012のスウェーデン戦でのすばらしいゴールを思い出すといい)。ヘディング以外はたいしたことのない選手だが、キャロルがいるとチームメイトは彼の頭に合わせてクロスを放り込まなくてはならないと思ってしまう。彼がいない布陣を組めば、ヘンダーソンやダウニングはもっと自分の持ち味を発揮できるかもしれない。

 今シーズンのリバプールに逆襲を期待できる理由はほかにもある。まず、昨シーズンほど運に恵まれないシーズンは二度とありえない。いかに戦術が誤っていたとはいえ、リーグ戦でシュートがゴールポストやバーに33回も阻まれていなければ、勝ち点は大幅に増えていた(33回という数字はオプタがデータを取りはじめて以来、最も多い)。しかもリバプールは昨季、PKを5、6回はずしている。

 ロジャーズは補強方針にも手を加えるだろう。ジェラール・ウリエからラファエル・ベニテス、そしてコモリまで、リバプールの首脳陣は移籍市場で失敗ばかり続けていた。リバプールを代表する選手のひとりであるジェイミー・キャラガーが自伝で嘆いているように、エル・ハッジ・ディウフからジミ・トラオレにいたるまで、誤った補強を繰り返してきた。「資金を投じたからといって成功するとはかぎらないことを、私はアンフィールドで思い知らされた」と、キャラガーは書いている。「金は、使うべき選手に使わなくてはならない」

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