【イタリア】シーズン不敗優勝を達成したユベントス、変貌の理由

  • 内海浩子●文 text by Uchiumi Hiroko
  • photo by Getty Images

最終節でアトランタに3-1と勝利したユベントス。今季で退団するデル・ピエロ(右)が1ゴールをあげた最終節でアトランタに3-1と勝利したユベントス。今季で退団するデル・ピエロ(右)が1ゴールをあげた かつての常勝ユベントスは世界的名手を擁しながらも、武器としたのは華より実をとる堅実なサッカーだった。だが今季のユーベは、メッシやイブラヒモビッチのような飛び抜けた主役選手抜きで、華も実もとってみせた。常にゲームを掌握し、シュートの雨を降らせて観客を喜ばせながら、守備もぬかりなく、ひとりひとりがチームの全てに力を合わせるサッカーでスクデットを獲ったのである。

 B降格を境に苦しんできたユベントスと今季のユベントスの大きな違いは数多くあれど、真っ先に思い浮かぶのがケガ人の少なさだ。これまではとにかく故障者続出で、トレーニングセンターの場所をしめっぽくて霧深いヴィノーボに建てたのが原因だ、とまことしとやかに噂されるほどだったが、そのせいではなかったわけだ。

 ケガ人が少なかった理由は何か。選手の誰もが口にしたのが練習のハードさだ。走りに走った夏。猛暑の中で限界を超えてのトレーニングとなったアメリカ合宿。シーズンが始まっても、「水曜日の練習をクランピ(足がつる)で終えるなんて初めての経験だよ!」とクアリアレッラが証言するほど厳しいものだった。

 コンテと共にグラウンドでの体作りに目を光らせたのがフィジコのベルテッリ。彼はスパレッティがベネチア時代から重用した人材で、美しいサッカーで魅了したゼロトップ・ローマの陰の立役者でもある。一方、ジム担当はフリオ・トウス。ライカールト時代のバルセロナのフィジカルコーチである彼は、特にパワートレーニングには細心の注意を払い、筋弾性を上げるメニューを多く取り入れたという。

 その結果、故障者が少ないどころか、チームが大きくコンディションを落とすことすらなかった。優勝のキーマンと言われるピルロがいい例だ。シーズンを通してこれほどコンスタントに出来のいいピルロを見たことがない。ミラン時代は砂上トレーニングで肉離れをするなど、筋肉系のトラブル続きだった彼が今季欠場したのはたったの1試合。理由は出場停止だったからである。

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