バルセロナの秘密~グアルディオラが成し遂げた革新とは何か (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

 では、グアルディオラの果たした革新とは何か。バルセロナの強さの秘密とは何なのか。僕たちが手にするべき「暗号表」の一部を見てみよう。

1 ボールへのプレス

 昨年5月、ウェンブリー・スタジアムでのチャンピオンズリーグ決勝でバルセロナと対戦する前、マンチェスター・ユナイテッドの監督アレックス・ファーガソンはこう言っていた。ボールを奪うためにバルサがかけてくるプレスは「怖い」ほどだ......。ファーガソンによれば、これはグアルディオラによる革新だ。

 2009年にローマで行なわれたチャンピオンズリーグ決勝でバルサと戦ったとき、マンチェスター・ユナイテッドはこのプレスにどう対応すればいいかわからなかったと、ファーガソンは認めた。会場がウェンブリーならそんな展開にはならないとファーガソンは思ったようだが、当てがはずれた。

 バルセロナは、まさにボールを奪われた瞬間からプレスをかけはじめる。プレスをかけるには、それが最高のタイミングだからだ。ボールを奪ったばかりの選手はプレスに弱い。タックルやインターセプトをしたばかりだからゲーム全体が見えておらず、体力も消耗している。視野は狭く、疲れている。フィールド全体に視野を広げるには、ふつう2~3秒かかる。だからバルセロナは、その選手がもっといい位置にいるチームメイトにパスする前にボールを奪おうとする。

 しかもプレスをかけた選手がボールを奪い返し、すぐにバルセロナのものになったら、ゴールへの道が見えてくる。ここでリオネル・メッシのタックルの才能が威力を発揮する。メッシは大変な反射神経の持ち主だから、ボールをタックルされてもコンマ何秒かで奪い返すことがある。

2 "5秒ルール"

 もしバルセロナがボールを失ってから5秒以内に奪い返せなかったら、彼らは少し下がってコンパクトな「10人の壁」をつくる。先頭にいる選手(たいていはメッシ)と、いちばん後ろにいる選手(たとえばカルレス・プジョル)の間は、ほんの25~30メートルだ。その狭いスペースで相手がパスをつなぐのはむずかしい。

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