【ドイツ】ドルトムントのお株奪ったシュツットガルト、酒井高徳の成長 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text Ryokai Yoshiko
  • 木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo

 酒井は今や一新人ではなく、主力選手のひとりとしてのパフォーマンスを見せている。右サイドバックで起点となり、攻撃の組み立てに参加するのはもちろん、幾度となくドルトムント自慢のサイド攻撃を食い止めていた。

 また、何より目を引くのは意思の伝達能力だ。ドイツ人の母を持つ酒井だが、渡独以前はドイツ語をそれほど話せなかったという。それでもドイツに来て「言わないと伝わらない。わかるだろう、ではダメ」ということを学んだ。この日も右サイドのスペースを駆け上がったものの、ボランチからのパスが出てこないシーンがあった。結局、セイフティに近くでつなぎ、チャンスにはつながらない。すると酒井は大きな身振りで体ごと怒りを表現して見せた。

「何が何でもあの場面は自分に出してもらわないと。チャンスになったかもしれないわけだし、そうしないと自分のストロングポイントが何かわかってもらえない。ああやって表現することで、次に同じような場面でボールが出てくる可能性が上がるから」

 加入からわずかに3ヵ月で、あっという間にチームにフィットした背景にはこうした順応性の高さがある。

 試合はいったん2-3と逆転されたドルトムントが、再び4-3とひっくり返す。フンメルスがゴール前でフェイントを入れた見事なシュートで追いつき、右CKからペリシッチが合わせて逆転に成功した。この間のスタジアムの盛り上がりは鳥肌もの。全てのサポーターがチームを勝たせるべく大声を張り上げ、今季一番の熱気に包まれた。

 だが、それでもシュツットガルトは諦めなかった。カップ戦との連戦の疲れもあり足が止まるドルトムント。結局はゴール前でつながれて失点、引き分けに終わった。

 この日のドルトムントが辛かったのは、リードした場面でもまだ、いつものように前線からプレッシャーをかけ、ショートカウンターを繰り返さざるを得なかったことだ。中盤でボールを保持し、ゆっくりとペースを握りやりすごすことはできなかった。これにはゲッツェ不在の影響も小さくない。

「2-0になってからもイケイケのサッカーしかできなかった。前で落ち着かせるということができなかった。試合展開としてはもう少し考えるべき」と、香川。負けたに等しいような落ち込みを見せていた。

 気になるのは4-4に追いつかれた後も、クロップ監督が「まあ、仕方がない」とでも言うように苦笑いを見せていたことだ。これで2位バイエルンとの勝ち点差は3にまで縮まり、優勝の行方はわからなくなってきた。

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