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[2011年09月30日(金)]

【スペイン】今季、バルセロナが3-4-3を採用している理由

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • ムツ・カワモリ●写真 photo by Mutsu Kawamori/MUTSU FOTOGRAFIA

アトレティコ・マドリード戦に続き、チャンピオンズリーグ、バテ戦も5-0で大勝したバルサのグアルディオラ監督 スペインリーグ第6節。バルセロナはホームにアトレティコ・マドリードを迎え、5-0で粉砕した。得点はビジャ、オウンゴール、メッシのハットトリック。システムは3-4-3だった。

 ここ数年、強すぎるバルセロナに、僕は正直、「引き気味」になっていた。世界で最も魅力的かつ攻撃的なサッカーをしていながら、なかなか王者になれない姿、肝心なところで負けてしまう姿、まさに美しく散るその姿こそがバルサの真髄。そこにサッカーの特異性、エンタメ性をたっぷり拝ませてもらってきた僕にとって、最近のバルサは面白くないものになっていた。良いサッカー、僕好みのサッカーをしていることは事実ながら、一方でラブリーさは失われていた。

「魅力的なサッカーをしながら勝つ。勝利と娯楽性をクルマの両輪のような関係で追求するのがバルサのサッカーだ」とは、僕のインタビューに答えてくれたクライフのお言葉だが、当然のように勝ってしまう最近のサッカーは、娯楽性が勝利に対して著しく劣っていた。そんなに強いのなら、より娯楽的である必要がある。勝利と娯楽性のバランスは、バルサらしくない方向へ乱れていた。

 結果、究極の善玉から、絶対に負けない悪役へ、キャラを一変させたかのようだった。安心して見ていられるところ、ハラハラドキドキさせてくれないところに、何よりつまらなさを感じた。むしろバルサがズッこける姿を、気がつけば僕は密かに願っていた。

 とはいえ、希望の光は差していた。それは昨シーズンのチャンピオンズリーグ、対ルビン・カザン戦で3-4-3を披露したことにある。グアルディオラ監督は定番だった4-3-3を、そこで突如いじったのだ。いま世の中に存在する布陣の中で、最も攻撃的だと言われる布陣を採用した。好んで勝利を難しくしようとしたわけだ。過去を捨て、新たなものにチャレンジするその姿勢に、監督としての健康さを感じずにはいられなかった。

 その一回限りでは終わらないとの確信もあった。近い将来、グアルディオラはきっとやる。3-4-3を堂々と掲げて臨む。実は3-4-3こそ彼がやりたくて仕方のない作戦。あっさり勝ってしまうバルサに、何よりグアルディオラ本人が面白味を抱けなくなっている。モチベーションを低下させている。ルビン・カザン戦を見た瞬間、僕はそう直感した。

 そして今シーズン。読みは見事に当たった。グアルディオラは3-4-3に積極的にトライしている。88~89、89~90シーズンのミラン以来となるチャンピオンズリーグ2連覇が掛かったシーズンだ。達成すれば歴史に名を刻む絶好の機会であるにもかかわらず、あえて超攻撃的な、サービス精神溢れる布陣を採用。ディフェンディングチャンピオンの名に”ふさわしくない”スタイルで臨んでいる。

 それでこそバルサ。手堅く勝とうとせず、理想を追求するグアルディオラの姿勢に、パチパチパチと拍手を送りたくなる。憎たらしい存在から、究極の理想を追求する善玉へ、バルサはキャラを戻した恰好だ。

 危なっかしくも斬新な3-4-3だ。バルサが従来採用していた4-3-3は、センターフォワードのメッシが10番のポジションあたりまで下がる「0トップ型」だった。いわゆる4-6-0的な4-3-3と言えたが、そのエッセンスは3-4-3になっても健在。メッシの0トップが維持された3-4-3だ。少なくとも僕は、これまでのサッカー観戦歴の中で、このデザインを見たことはない。話でしか聞いたことがない。

 クライフがいた頃のアヤックスを実際に見たことがある人はどれほどいるだろうか。グアルディオラの3-4-3は、40年前の布陣に似ていると、彼らは言うに違いない。それが正しいとすれば、0トップのメッシはまさにクライフになる。

 40年前とは、グアルディオラがちょうど生まれた頃の話だ。アヤックスはその時、3シーズン連続欧州ナンバーワンに輝いている。グアルディオラは、失いかけていたと言われる監督としてのモチベーションをそこに見いだしたものと推察される。

 布陣は流行する。一時、ビッグクラブではバルサしか採用していなかった4-3-3が、ここ数年で一気に世界に広がったように、グアルディオラ式3-4-3が流行してくれればしめたものだ。少なくとも選択肢のひとつになってくれれば、サッカーはより面白いものになる。40年前を彷彿とさせるスタイルである点にも浪漫を抱かせる。

 ともすると、目先の勝利にこだわりつつあるようにも見えるザッケローニのハートにも火が点くはずだ。大袈裟ではなく、バルサが密かに負けることを願っていた僕の心は一変した。ディフェンディングチャンピオンをわざわざどこよりも注目に値するチームと言うのは、あまのじゃくとしては凡庸だが、だからといってそこに居心地の悪さは覚えない。今季のバルセロナは面白そうだ。明らかに昨シーズンより。胸を張ってそう言いたい。

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