東大医学部卒・元インカレ女王の内山咲良が目指す女性アスリート支援「月経、栄養、メンタルケアで幸せな競技生活を手助けしたい」 (4ページ目)

  • 一ノ瀬 伸●取材・文 text by Ichinose Shin

【幸せな競技生活を手助けしたい】

ーーそのうえで、女性アスリートへの支援はたとえばどういうことをしていきたいですか?

 女性アスリート外来でのサポートのひとつとして、月経を試合に合わせて移動するということがあります。この試合に月経を被らせたくないから早めに来させようとか月経の周期の調整ですね。

 ただ、月経のことに加えて、女性アスリートが悩みやすいことは、栄養と体重の管理だと思うんです。私は陸上競技のなかでも跳躍、短距離に取り組んでいて、周りの女子選手も中長距離の子と関わることが多かったので体重を減らしたい選手が多かったですけど、減らすにしても筋肉を減らしてしまうと競技に悪い影響があるし、減らし方によっては月経が止まってしまう場合もある。

 私自身、高校生の時、知識がなくて栄養管理がうまくできていませんでした。炭水化物ばかりとっていて、たくさん食べているから足りているだろうと思っていてもなかなか調子が上がらないし、体重もコントロールできなかった。大学に入ってから栄養士の方に相談する機会があって、それからはタンパク質はこれくらい、糖質はこれくらいと計算しながらごはんを食べるようになりました。

 また、ただ体重を減らしたいというよりは、体の組成に目を向けるようになって、筋肉を増やしたい、競技に適応した体づくりをしたいという方向で考えられるようになっていきました。

 食事、体重管理への向き合い方が変わったことで、競技にもいい影響があったと思っています。ただ、そういうふうに考え方を変えても体重が減る、増えるという部分のストレスはずっと残っていました。

 そういう経験から私は、月経とともに栄養管理の部分も込みでサポートに関わりたいと思っています。月経管理、栄養管理、メンタル面のケアなども含め、総合的に目の前の女性アスリートが幸せな競技生活を送る手助けができればと思っています。

「女性アスリートを総合的にサポートしたい」と語る 写真/スポルティーバ「女性アスリートを総合的にサポートしたい」と語る 写真/スポルティーバこの記事に関連する写真を見るーーでは、最後に今後の夢を教えてください。

 大きな夢というのはあんまりないんですけど、まずは医者として、産婦人科医としてしっかり働けるようになりたいです。その傍らでアスリートのサポートにも関われるようになりたい。アスリートのサポートは、比較的新しい分野なので今あるものを発展させたり、新しい方向も開いていくとか、そういうところにも関われたらいいかなと。卑近(ひきん=ありふれた)な目標なんですけど、まずはそういうところですね。

終わり


前編<東大医学部卒の三段跳インカレ女王・内山咲良が引退を決めた理由「研修医と陸上の両立は迷いもあったけど、すごく尊い時間でした」>を読む

東京大学医学部時代のインタビュー記事>>


【プロフィール】
内山咲良 うちやま・さくら 
1997年、神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒業。筑波大附属中・同高を経て、2016年に東京大理科3類に現役合格。陸上競技は中学時代からスタートし、高校3年時には走幅跳で全国高校総体(インターハイ)出場。大学入学後に三段跳を始め、2021年の日本学生陸上競技対校選手権(日本インカレ)女子三段跳で自己新記録13m02を出して優勝。大学卒業後、2022年から静岡県内の病院に研修医として勤務。同年6月の日本選手権で4位入賞。2023年5月に引退を発表した。最近の趣味は登山。

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