アイススレッジホッケー世界選手権で惨敗。ゼロからのリスタート (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 そんな中、今回はそこに2010年のバンクーバーパラリンピック後に競技を始めた堀江航(DF)と熊谷昌治(FW)も名を連ねた。堀江は35歳、熊谷は40歳。10代後半から20代の選手が中心で、3セットを組んでくるカナダやアメリカを始め、世界には水をあけられたが、彼らが必死にその背中を追い、最後まで前線で戦いぬいたことは大きな意味があったに違いない。

 今大会、日本の3得点中2ゴール1アシストをマークした熊谷。ファーストラインのフォワードとして爪痕を残したが、「世界のものすごいプレッシャーにジタバタしてしまい、対応できなかった」と唇を噛んだ。

 熊谷はバイク事故によって右ひざ下を切断。柔道などの武道経験者で団体競技には縁がなかったが、地元の長野チームに所属する吉川守(FW/45歳)に誘われ、バンクーバーパラリンピックの銀メダルを見せてもらったことが競技に取り組むきっかけになった。氷に乗り始めた当初はスレッジでバランスをとることすら難しく、「このまま本当に続けられるのか、と不安になった」。だが、吉川をはじめチームメートの献身的な指導もあってぐんぐんと上達。アイススレッジホッケーと出会ってからわずか3カ月で、日本代表に選ばれるまでになった。初めてのアメリカ遠征では試合に出る機会がなかったが、「日本代表の主力選手になる」という目標を掲げ、世界に飛び出した。

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