ガールズケイリンコレクション初優勝の久米詩が明かした覚悟の直談判 代表チームに「一緒に練習させてもらいたいです」 (3ページ目)

  • text by Sportiva
  • 高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu

【ナショナルチームとの両立】

 そんな彼女を一回り大きく成長させたのは、速さと強さへの飽くなき欲求だ。自分の走りにさらに磨きをかけるために、「(昨年)8月頃に全日本(選手権)の競技大会があって、それが終わったタイミングで(ナショナルチームの方に)『一緒に練習させてもらいたいです』とお願いした」という。ナショナルチームは、スプリントやチームパシュートなどトラック競技全般を対象としていて、UCIトラックネイションズカップなどの世界大会への派遣をはじめ、五輪選手を輩出することを主な目的としている。目指しているところは、世界トップクラスの速さと強さだ。

 この無謀とも言える久米の直訴が実り、「9~10月頃からウエイト(トレーニング)もトラック(トレーニング)も一緒に練習している」。日本を代表するトップレーサーたちが集うナショナルチームでの鍛錬によって、彼女の走りはさらにレベルアップした。

「(自転車)競技と競輪の両立をやっている方もいて、やっぱり難しいんですが、私はどちらかに絞るわけではなく、強くなれればいいかなという感じでやっています。結果的に競技にも競輪にもつながると思うので、今は継続してやっていきたいと思っています」

 今回のビッグレースでの優勝は、彼女の貪欲な姿勢が実を結んだ結果と言え、ひとつの大きな勲章になったはずだが、レース後の記者会見でも気の緩みは見えなかった。

「足りないところは、走り方だったり、メンタルだったり、調整の仕方だったり、本当にやることはいっぱいあります。全部含めて底上げはしたいですね」

 この優勝で久米は賞金ランク1位となり、獲得賞金額で上位になることで出場できるガールズグランプリ(12月29日)にも一歩近づいたが、グランプリ優勝への意欲を見せつつも「1戦1戦、誠心誠意戦いたい」と目の前の勝利に全力を尽くすことを誓った。

 今後はナショナルチームのメンバー入りを果たすために、自転車競技でも結果を出すべく力を注ぐ久米。競輪との両立は決して簡単な道ではないが、チャレンジすることによって、その走りはさらに洗練されるはずだ。彼女のこの姿勢が、今後のガールズケイリンを盛り上げる一助になることは間違いないだろう。

【Profile】
久米詩(くめ・うた)
1999年9月3日生まれ、京都府出身。高校まで硬式テニスに励み、卒業後に競輪学校に入学。2019年7月にデビューし、同年10月に初優勝を飾る。2020年にはデビュー2年未満の選手で競うガールズ フレッシュクイーンで優勝。2021年に初めて特別レースのガールズケイリンコレクションに出場し、2023年5月の同大会で初優勝する。

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