ロコ・ソラーレの吉田知那美は「早くこの町を出たかった。ここにいたら何者にもなれない、という恐怖心があった」 (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro

 あの日、子どもたちに伝えたかったのは、常呂町が小さい町だからって、可能性が小さいかと言えば、そんなことはまったくなくて、カーリングだけではなく、勉強でも、スポーツでも、自分が何をしたいかわかっていれば、どこに生まれても、どこで育っても、どこで過ごしていても、そこが都会か田舎かは夢や目標を諦める理由にはならない――。

 ということなんですけれど、途中で泣いちゃったので、伝わったかどうかは自信がありません。あの子たちが今も真っ直ぐに育ってくれていればと願うばかりです。

 小さな頃、あんなに出て行きたかった常呂町は、世界中で一番落ち着く場所です。遠征先で都会にいると、無意識に緑の多い場所を探してくつろいだり、海や湖を見に行ったりしちゃいます。きっと私は緑や海など、手つかずの自然に囲まれて育ったからでしょう。住んでいる時は意識してなかったのですが、離れてみると気づくことは本当に多いです。

 2018年にあの挨拶をしてから5年経った今も、ロコ・ソラーレは北見市に住みながら世界中でカーリングをしています。私たちの夢はこの町にいて叶えるからこそ、大きな意味があると思っています。そして、どこにいても大好きな家族と可愛い猫たちがいる常呂町のことを恋しく思っています。

吉田知那美(よしだ・ちなみ)
1991年7月26日生まれ。北海道北見市出身。幼少の頃からカーリングをはじめ、常呂中学校時代に日本選手権で3位になるなどして脚光を浴びる。2011年、北海道銀行フォルティウス(当時)入り。2014年ソチ五輪に出場し、5位入賞に貢献。その後、2014年6月にロコ ・ソラーレに加入。2016年世界選手権で準優勝という快挙を遂げると、2018年平昌五輪で銅メダル、2022年北京五輪で銀メダルを獲得した。2022年夏に結婚。趣味は料理で特技は食べっぷりと飲みっぷり。

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