桃田賢斗は東京五輪で金に最も近い。衝撃的な勝率は攻撃強化から生まれた (2ページ目)
昨年末、12月11日~15日に中国の広州で行なわれたBWFワールドツアーファイナルズは、年間成績上位8人しか出場できないハイレベルな大会だが、桃田は予選リーグから1試合も負けなかった。特筆すべきは、決勝戦の勝ち方だ。相手は、過去の対戦で何度も死闘を繰り広げている、好敵手のアンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア)。スピードがあり、攻撃的な選手だ。互いに攻め合った第1ゲーム、桃田はギンティンに押し負けた。しかし、相手の土俵に踏み込むような戦いぶりこそ、この1年の桃田の進化だった。
桃田は、ギンティンとは異なり、コントロールを生かしたレシーブ主体の戦い方を得意としてきたが、相手に対策を練られるようになった。前回大会では、世界ランク1位になっていたものの、当時世界ランク3位の石宇奇(シー・ユーチ=中国)に完敗。最初からトップギアを入れてきた相手に攻め切られ、レシーブ一辺倒だった桃田は、相手にプレッシャーをかけられずに敗れた。
そこで、2019年はスピードアップと攻撃力の向上をテーマに取り組んできた。苦手分野だった攻撃力の強化と、ハイペースの打ち合いに耐え得る体力の増強により、桃田は、格下には打ち勝って早く試合を終わらせて体力をキープできるようになり、連戦でも結果を出し続けられるようになった。
そして、攻撃の強化は、コントロール力を武器にする桃田の戦い方の幅を広げた。
話を19年12月、ワールドツアーファイナルズ決勝のギンティン戦に戻す。桃田は、第2ゲームも「スマッシュを決められて、取れないなと思い、心が折れそうになった」と話した厳しい展開を強いられたが、終盤に戦い方を変えてゲームを制した。攻撃によるミスをなくす、本来の戦い方に戻すと、相手が攻め急いでミスをするようになった。1-1で迎えた最終の第3ゲームでも5-12と追い込まれてから、丁寧なラリーで7連続得点を奪って追いついた。最後は、足を痛めた相手を、高精度のラリーで四隅に振り回して、ついに主導権を掌握して2-1の逆転勝利に持ち込んだ。
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